社会保険労務士 野崎大輔の視点
止める必要はないが、参加は任意に
止める必要はありません。教育方針を決めるのは会社の自由ですので、どのような研修をやるかは裁量権があります。社員個々の業務遂行に必要な知識や技能の習得に必要な研修等は、業務命令として参加を強制することに問題の余地はないと考えられます。
しかし使用者の裁量権は無制約ではなく、業務との関連性が薄く合理的な意義に欠けるもの、自己の信仰する宗教と異なる宗教行事への参加等を義務付けることはできません。今回の研修は社員の成長と同じ価値観を持って働くことを目的として実施しているかと思います。意図は共感できますが、客観的に見たら業務との関連性は薄く、思想統制と思われてもおかしくはありません。本人の意思に反してでも強制的に受講させたら、「憲法の信教の自由の侵害だ」と言って争いになる可能性は高いです。実施するのはかまいませんが、研修としてやるなら参加は任意にした方が良いと思います。
どうしても参加を義務付けたいというのであれば、業務との関連性や必要性について合理的な説明ができるようにしておく必要があります。入社の面接の際に「ウチの会社はいろいろな研修がありますが、人間性を高めるためにこういうこともやっています」と宗教的な思想統制と誤解を生じないように説明しておくのも良いかもしれません。