「社員の気持ちが萎える」会社の特徴 だから人が辞めていく

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意外と多い、「社長のビジョン欠如が原因」のケース

「彼が、上場や海外進出を目標に掲げる会社を新たな転職先を選んだことは、聞いているよ。でも、うちは上場も海外進出も考えていないのだから仕方ないだろう。嘘をついてまで絵に描いた餅を社員に見せる気はないからね」

   私は、思わず黙り込んでしまいました。S社長には、Tさんが転職を決めた本当の理由が見えていなかったのです。単に上場企業に勤めたいから、海外で仕事がしたいから辞めたと思っているのかもしれないと思えました。なぜ、がんばっていたTさんが日々の仕事に埋没してしまったのか、なぜ、TさんはN社を出て別の会社への転職を決めたのか。

   Tさんは、新規事業がポシャったからといってすぐには辞めませんでした。当面の目標を失いながらも、社長と意見交換を重ねて、会社のめざすものが見えさえすれば、会社と一緒に自分が成長していけると考えていたのです。でも結果的には辞めてしまいました。つまり、会社のビジョンが見えず、彼は先に進めなかったのです。

   数字目標に追い回されて社員が疲弊してしまう会社とそうでない会社、業績低迷期に社員の気持ちが萎えてしまう会社とそうでない会社、社員が給与や処遇ばかりに気をとられて不平不満が絶えない会社とそうでない会社、そして入れ替わりが激しい会社とそうでない会社、その違いの原因が「社長のビジョン欠如」であるケースは非常に多く存在するのです。

   ビジョン欠如の話は、社長自身が現段階で見えていない以上、ストレートに話をしてもあまり効果がありませんし、社長自身のにじみ出る思いとして作り上げていかなければ意味がありません。S社長とは今後も時々会って、そのあたりを上手に調整できればいいなと思っています。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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