「社員の気持ちが萎える」会社の特徴 だから人が辞めていく

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   長年懇意にしている通信機器販売N社の中堅社員だったTさんから、転職をしたという連絡をもらい、お目にかかってその経緯をうかがいました。

   Tさんは、5年前にネット系企業からN社に移りました。そのきっかけは、N社の新規事業構想を事業化するための中心要員として、人を介して社長から声をかけられたことでした。しかし転職後、新規事業は不況による本業の不振で棚上げになります。それでもTさんは、その後営業部長に抜擢され、前職の人脈も活かしながら社長の期待に応えるべくがんばってきました。それが突然の転職と聞き、私は驚きました。

「目標数字ばかりを相手にする生活に疑問を持ち始めました」

人がなぜか辞めていく…
人がなぜか辞めていく…
「毎期、毎期目標数字に追われる仕事に疲弊しました。評価にも待遇にも不満はないですが、ここ1、2年、目標数字ばかりを相手にする生活に疑問を持ち始めました」

   Tさんは、転職を考えたきっかけから説明してくれました。

   聞けば、新規事業立ち上げを想定していた当初の1年は、既存事業の営業をしながらでも「なんとか事業化をものにして、会社の次のステップへの伸展に貢献しよう」という目標が励みになっていたものの、それが棚上げされてからは目標が見つからずにきたのだと。

「中小企業は、ポストや報酬にも限りがあり、それを目標に生きるのは難しい。この2、3年、社長とも機会あるごとにお話をしてきましたが、どうにも僕からみて目標に出来そうなものが、N社の将来には見出すことができなかったのです」

   転職先は当面、待遇面では今よりも見劣りするものの、「明確な将来像をもって上場や海外進出を目指しているので、一緒に成長していけそうだ」という思いを励みに、今は毎日ハリのある仕事ができていると話していました。

   N社のポイントゲッターとして働き、将来は社長を支える存在になるであろうと思っていたTさんの転職はかなりショッキングな出来事でしたので、その理由を旧知のS社長がどう受け止めているのか聞いてみることにしました。

   S社長は、中核社員の転職をさぞやショックに受け止めているに違いないと思いきや、意外なほどにサバサバとしていました。

「ああ、T君の話ね。仕方ないさ、環境の変化で彼が担当する事業がポシャったことが全てだろうな。彼がやりたいことを他に見つけたのなら、それはそれでよかったと思っているよ」

   私はこの社長の回答には非常に物足りないものを感じたので、彼がN社で目標を見出せなかったことに問題を感じないかと突っ込んでみました。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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