10代のスマートフォン所有率が、急速に伸びている。総務省の全国調査によると、高校1年生では8割以上にも及んでいる。
高校生にとってのスマホは、まさに「手の中のパソコン」だ。友人とのSNSやゲームなど、何かと遊びのイメージに関連付けられてしまうスマホだが、これを「勉強」に活用しようという動きが広がりつつある。その名も「スマ勉」だ。
4つの「不」を同時に解消
総務省が2013年に発表した「青少年のインターネット・リテラシー指標等」によると、高校1年生のスマホ所持率は84%(前年は59%)。1日あたりの平均使用時間も「2時間以上」(56%)が最も多い。
高校生にとって、これだけ急速に身近なデバイスとなったスマホ。その特性を活かして、高校生の勉強に役立つサービスも多様に出てきている。
「高品質の授業を低価格で、いつでもどこでも、何度でも繰り返し視聴できるということ。まさにこれが『スマ勉』のメリットと言えます」
そう解説するのは、リクルート進学総研の所長・小林浩さんだ。
「スマ勉」はリクルートホールディングスが発表した、2014年トレンドキーワードのひとつ。
文部科学省は2012年、全国学力調査に関する審議会で「国として教育格差等の状況を把握・分析し、関連施策の検証を行うため、きめ細かい調査を実施することを検討する必要がある」としている。
背景には、「子どもの学力低下に歯止めをかけたい」という危機感があり、グローバル人材を育成するために、よりきめ細かい教育をすべきだとの思いもにじむ。
教育格差は、地域や所得と密接な関係にあり、この影響をなるべく小さくすることが望まれている。
これまでは、高校生の学力には4つの「不」(マイナス)が大きく影響してきた。通いたい塾や予備校が近くにない「距離の不」、部活などで忙しい「時間の不」、良い教育ほどお金がかかる「価格の不」、身近に良い講師がいなかったり教材が見つからなかったりする「品質の不」の4つだ。
これを同時に解消すると期待されているのが「スマ勉」。スマホの教材やオンラインの授業であれば、距離は関係ない。移動中も利用できるので、時間を有効に使うことができる。生徒は、無料アプリも含め安くて、質の良い授業や教材を選ぶことができるというわけだ。
教材も授業も「無料」アプリで
宮城県に住むナオさん(私立高校2年生)も、15個ほどの勉強アプリを駆使する「スマ勉派」だ。「英単語1800」で、発音を音声で聞きながら暗記をする。物理の公式や問題を動画解説で学べる「ロバスト物理」も起動頻度が高い。いずれも「無料アプリ」だ。通学時間も勉強に使えるようになった。
岡山県の岡山龍谷高等学校では、「Rアカデミア室」を2013年に新設した。iPadを常備し、オンライン予備校「受験サプリ」を授業の補習教材として利用できるようにしている。講義の中で重要な箇所は、学校の教師が解説を加えるなどし、新しい教育が展開されている。
確かに、ここ数年で高校生をターゲットにした勉強アプリは増えてきている。英単語や数学公式集といった「教材」や、「受験サプリ」「manavee(マナビー)」といった「オンライン授業」、さらには勉強を記録して可視化し、タイムラインで仲間と励まし合いながら勉強できるSNS「Studyplus(スタディプラス)」なども登場している。これらの多くは無料か、低価格だ。
前出の「受験サプリ」では、約25万人の利用者のうち7割がスマホからの利用だった(2013年)。利用時間のコアタイムは21時~24時の夜だが、通学時間や昼休みにも多く利用されているというデータも出ている。
「スマホ依存症ばかり問題視されますが、高校生はきちんとスマホを勉強にも活用しています。まさにスマホネイティブ世代の勉強法『スマ勉』が、2014年のトレンドになっていくのではないでしょうか」(小林浩所長)