米社会学者が実証した「弱い紐帯」理論
実は、転職で効果を発揮する人的ネットワークは意外なところにあるようだ。米スタンフォード大学教授で、社会学者のマーク・グラノヴェッター氏が提唱する「弱い紐帯の強み」(The strength of weak ties)という理論に、その「答え」がある。
同氏は1973年、転職に際しては、家族や親戚、親しい友人といった強固な結び付きよりも、日ごろそれほど接触のない人的なネットワークを利用した方が転職後の満足度が高いという仮説を、研究に基づいて立てた。いわゆる「強い紐帯」の人々は、自分と似た価値観を共有しているため、得られる情報も自分が知っているものが多くなるという。だが「弱い紐帯」の人々とは普段密接なかかわりがないだけに、かえって自分の持っていない情報を提供してくれるというわけだ。むろんすべてのケースに当てはまるわけではないだろうが、「コネ」に頼る場合、親友よりも仕事上たまに連絡をする程度の人物、もしかしたら交流サイト(SNS)上だけの付き合いの相手の方が有効かもしれない。
記者の場合も、過去に転職先の情報を得た相手は、「共通の友人を介して初めて会食した人」と、「きょうだいの知り合いだが自分は1度も会ったことのない人」だった。幸い、いずれも会社も満足できる仕事環境だった。「弱い紐帯」理論を図らずも実証した例だ。