毎年、子供の人気の名前ランキングが発表されると、キラキラネームやDQNネームをみつけて、批判するひとも多くいます。
心愛(ここあ)ちゃんや、希空(のあ)ちゃん、
澄海(すかい)くんや、馬周(ましゅう)くん
読めないような当て字の名前や、外国風の名前など、耳を疑うようなものが多いです。
私もずっと、いかがなものかと思っていたのですが、つい先日180度考え方をかえました。
「テツユキ」なのにジョンと名付けられた…
というのも、私が外国に住むようになってから、わかったのですが、自分の名前を相手に覚えてもらえないのです。私の名前は「テツユキ」なのですが、ほとんどのひとは発音できません。発音できないので、覚えることもできません。
アメリカやフランス、ドイツ、スウェーデン、スペインといった欧米系のひとはもちろん、シンガポール、ベトナム、フィリピン、中国人、いろんな人に「テツユキ」と言いましたが、だれも覚えてくれないんですね。
だったら、ニックネームをつければいいじゃないか?
もちろんニックネームをつければいいわけですが、以前カリフォルニアで、
「おまえ、なんだっけ、ティー……? わかんないから、そうだ、ジョンにしよう。ところで、ジョン、あれは……」ということがありました。適当にジョンと名付けられた日には、涙がでました。
一方で知り合いの「ジョー」さん、「ケン」さんはお得です。この名前なら100%全員が覚えてくれるのです。
そこで、キラキラネームをみてみると、これが、覚えやすい名前が多い。世界中のひとが一発で認識するような音、喋ることができる音、覚えやすい音なのです。
「ココア」ちゃん。かなり変ですが、世界中でココアを知らないひとはいないと思っていいでしょう。
「ノア」ちゃんも、人気のキラキラネームのようです。「ノア」は、実はアメリカでも人気の名前で、実際に赤ちゃん名前人気ランキングの第4位(注1)になってます。
「スカイ」くんも覚えやすいし、「マシュウ」は、英語圏のひとにとっては、Matthew(マット)ですから、忘れるはずはありません。
世界的投資家が娘につけた名前の理由
このように、むしろキラキラネームのほうが、海外にでれば、自信をもって名乗ることのできる名前になるかもしれません。
こんなことをいうと、激しいツッコミを食らうことはわかっていますが、あえて、キラキラネームも有りだ、ということを述べてみた次第です。
もちろん、あえてキラキラネームをつけなくても、日本語と外国で同じような音をもつような名前は、いいとおもいます。たとえば、
理沙 - Lisa
杏 - Anne
譲 - Joe
賢 - Ken
豪 - Go
などなど。
ほかにもMiki(美姫)や、Maya(摩耶)、Jin(仁) といった、覚えてもらいやすい発音はたくさんあります。
そして、この話を裏付けるというか、さらに衝撃的なエピソードがありました。
あの有名な投資家ジム・ロジャース氏の話です。彼は「娘に贈る13の言葉」という本のなかで、娘に語りかけるように、人生と投資で成功する哲学を語っているのですが、そのなかに娘の名前も書かれているのです。
それがなんと、ソフィアでも、エマでも、オリビアでも、シャーロットでもなくて、なんと、
「ルールー」
なのです。
これは欧米圏のひとからみたら、もう、真後ろから投げられたボールのような、とんでもないキラキラネームです。だって、フルネームでいったら、ルールー・ロジャースです。まったくありえません。
しかし、これには、ロジャース氏なりの哲学があってのことです。察しのとおり、ルールーは中国語です(注2)。
21世紀は中国の時代であると声高らかに宣言し、自身も中華圏であるシンガポールに移住してしまったロジャース氏としては、娘に中国語を教え、中国風の名前をつけることは、21世紀を生きる娘のことを考えれば当然のことなのでしょう。そして、ルールーなら中国語としても英語圏としても発音でき、だれにでも覚えやすい。もちろん日本人だってすぐ覚えられます。
よく考えられた名前なのです。
そして、日本のキラキラネームにおいても、中国風の名前がでてきたら、いよいよ本物でしょう。(大石哲之)
(注1)アメリカ人の赤ちゃん・子供の名前ランキング TOP100(2012年)アメリカ合衆国社会保障庁(SSA)
ただし、欧米圏では「ノア」は男性の名前です。
(注2)なお、ルール―の漢字は「楽楽」と書くのではと指摘されています。なおロジャース氏は漢字はわからないと本に書かれています