1月(2014年)初旬に『できる営業の頭の中』(日経新聞出版社)と言う本を出版しました。本書自体は東洋経済新報社から出版した書籍をリメイクした作品ですが、ダニエル・ピンクの近著『人を動かす、新たな3原則―売らないセールスで、誰もが成功する!』で、「日本屈指のセールスのカリスマ」…と紹介されたことがきっかけで声がかかりました。
無意識な行動の裏に潜んでいる成功パターン
今回は営業の成功について少々書かせていただきます。そもそも「できる営業」に直接「成功の秘密」を聞いても答えてくれません。その理由は答えられないから。ただし、内緒にしたいのではなく
何が成功の秘密だかわかっていない
のです。これは野球界で「名選手が名監督に必ずしもなれない」のと同じ。行動力に紐づく「思考」が感覚だからなのです。例えば、取材したネット広告企業でダントツ1位を走り続ける営業のDさん。社内では
「どうして売れているのか、聞いても、意味不明な回答しか返ってこない」
と不思議ちゃんのような扱い。決して売れる秘訣を隠したいのではありません。よくよく行動を観察しているとみえてきます。Dさんはお客様(クライアント)と信頼関係を構築して、ライバル会社の提案状況を巧みに聞き出し
<コンペ(競合)に負けない提案づくりにこだわっている>
から売れているのです。ただ、本人は気付いていません。営業で誰にも負けないと言う競争心から無意識にしているから。そんなDさんのように成功の秘密が感覚ゆえ、周囲に伝授出来ない人がたくさんいます。むしろ、できる営業では当たり前かもしれません。
ゆえに営業の仕事で成功パターンを導き出すのは簡単ではありません。そこで、人事コンサルタントの視点から、できる営業の成功の行動パターンを調べてみました。その対象者は金融・住宅・商社・マスコミ・通信と多岐にわたります。仕事で出会った各界で活躍する営業に取材を重ねて(ハイパフォーマーインタビューと言います)できる営業として成果に紐づく発想や行動のおける共通項目を絞り込み。すると、無意識な行動の裏に潜んでいる成功パターンがあることがわかってきました。まさにジョハリの窓の4分類で言う、
盲点の窓:自分が知らないで、他人が知っている自分
「私の仕事の強みはどこにあると思いますか?」
ちなみに若い頃、リクルート社時代に社内でトップセールスと呼ばれていた自分も成功パターンはわかっていませんでした。高い業績を上げていましたが、日々の仕事に忙殺されていました。ゆえに
「どうして、それだけ高い業績をあげているのか?」
と訊ねられたとき(当時)は、的を射た回答が出来なかった気がします。負けず嫌いで、営業として1番を取るゲームに熱中していただけだったからかもしれません。ただ、今さらながら分析してみると成功パターンは存在していました。かいつまんで紹介すると
・やり切りたい行動をルール化する
・ルールを周囲と共有して自分にプレッシャーをかける
など。こうした成功パターンを盲点の窓から解放の窓(自分も他人も知っている自分)に変えることができる人は、営業として継続的に成功しています。逆に盲点の窓のままだと、成功は一時的なもので終わる可能性が大。ちなみにトップ営業でなくても、それなりに成果を出している人であるなら成功パターンをもっているもの。ただし盲点の窓にいる自分かもしれません。盲点の窓を解放の窓に変えましょう。そのために大事なことは周囲から出来るだけアドバイスを受けこと。
「私の仕事の強みはどこにあると思いますか?」
と率直に訊ねてみてください。そして指摘された内容について素直に受け止めましょう。それができると自分への理解が深まります。また、
「挨拶が元気と言われたけど、それがどうして強みなのか?」
と指摘された自分を振り返る作業を面倒がらずに続けることも大切。どう考えてもわからない時はありのままを伝え、意見を求めることも有効です。(高城幸司)