アメリカでも日本と同じように「MBAで勉強してきたようなスカした奴に現場の何が分かる!」というネガティブな意見は多いです。しかも、叩き上げの人だけでなく大企業の経営幹部やマネジャーといったMBAホルダーまでそう語っていたりします。
いくら5年なり10年なり仕事で成功して有名校のMBAで経営を学んだからといって、卒業後いきなり「御社の経営についてコンサルティングしに来ました」といっぱしのコンサルタントを気取っていたら、相手は「はあ?」と思いますよね。
今回は、こうした批判にMBAがどう応えてきたのか、その一端がわかる事例を2回にわたりレポートします。
ケースメソッドをめぐる批判と改革
前回お話ししたように、企業に起きた出来事を分析し、議論を通じて「あの時こうするべきだった」「こうしたらもっと良かった」と議論するのが「ケースメソッド」です。教科書を読んで理論を勉強するよりは実践的ですが、「結局過去の事例であって、現在・未来では状況が異なるので役に立たない」「ディスカッションして理解を深めたといっても、所詮はアカデミック視点で実際のビジネスとは違う」といった批判にさらされてきました。
こうした経緯もあり、ミシガン大学のMBAでは「MAP(Multidisciplinary Action Projects)」という企業コンサルティングプロジェクトに学生全員が取り組みます。学生4人~6人がひとつのチームになって、国内外100以上のクライアントから選択して、1年次の最後の7週間をフルに使ってコンサルティングに取り組みます。
MBAの学生を、出張などの経費以外はほぼ無料で使えるとはいえ、企業側もどんなプロジェクトをMBA生に任せるか、担当者をどうするかなど、非常に労力を使うプログラムです。この交渉に当たる大学側も大変で、普通だったら「言うのは簡単だけど、企業との調整とか絶対無理!」とやる前から諦めるレベル。
最初はカオス!「お腹が空いて仕事ができない!」というメキシコ人も
私のプロジェクトは、某大手宅配ピザチェーンの「混雑都市におけるデリバリーシステム改善プロジェクト」でした。詳細は書けませんが、渋滞が起きやすい都市部でドライバーに「何分で」と強制することなく「仕組み」として配達時間を短縮できないか、というお題でした。
私のチームはアメリカ人、メキシコ人、ギリシャ人、ウクライナ人、ベルギーとレバノンの両国籍、そして私という大変多様性に富んだチームでした。しかも職歴も弁護士、コンサル、メーカー営業、金融、ITエンジニア、広告まで多士済々。今後のグローバルビジネスではこうしたシチュエーションが増えると考え、ぜひこの多様性を活かして良い結果を出したい、と私の期待は膨らんでいました。
しかし!7週間のうち最初の2週間は本当にカオス。「お腹が空いて仕事ができない!」というメキシコ人もいれば、「君のさっきのミーティングでの意見をクライアントは気に入っていないと思う」というニヒルなウクライナ人もいれば、ギリシャ人はお隣さんとお互いのアイデアについて口論してヒートアップ…。いったい私のチームはどうなってしまうのか!?明日の「実践教育(下)」へ続きます。(室健)