親せき・知人もターゲット 容赦ない「不正引き出し」は2014年も起きる

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一人ひとりの意識と行動しだい

   それでも、悲しいかな、毎年同じような手口が繰り返されてしまう。その理由は、不正を犯すのも、被害にあうのも、チェックをするのもすべて人間だからだ。金銭欲や借金のプレッシャーに負けてしまう弱さ、相手を信用しきってしまったり、忙しさを言い訳にチェックを怠ってしまったりする甘さを完全に払拭することはできない。リスク管理の永遠の課題といえるだろう。

   金融機関には、すでに十分すぎるくらいのチェック体制が整っているはずだ。要は、それら一つひとつのチェックを形式に流されずに徹底的にやり続け、ルール違反には厳しく対処すること。それにより、「常に誰かに見られている」「横領は必ず見つかり、人生が台無しになる」という意識を職員一人ひとりに植え付けることである。

   究極の防止策は、そもそも横領しようという気持ちにさせないことだろう。そのためには、問題を抱え込ませないコミュニケーション、「相談窓口」の充実、お金に困った時に社内融資を受けられる制度の充実などが不可欠だ。これらの対策の必要性は、すでに「耳たこ」だろうが、掛け声倒れに終わっていないか。

   残念ながら、2014年も金融機関職員の横領が起きるのは間違いない。いや、今もどこかで人知れず横領が進行中と言ったほうがいいかもしれない。

   自分自身が「不正のトライアングル」を作ってしまわないように、そして、自分の周りで働く人たちが道を誤らないように何をすべきか。やるべきことはわかっている。あとは、経営者、管理職、担当者一人ひとりの意識と行動しだいだ。(甘粕潔)

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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