景気良くなると高まる企業リスクも 「転職先への手土産」秘密持ち出しに要警戒

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   2013年の企業を取り巻く環境は「アベノミクス」で好転したように見えるが、真価が問われるのはこれからだ。一方で、円安による輸入物価上昇や消費税引上げなど、個人レベルの景気の先行きは厳しさを増している。

   古今東西、不正の発生原因には普遍的な要素があるが、景気動向の影響を受けることは確かだ。例えば、景気後退局面では、収入減やリストラによる横領リスクや、業績不振を隠すための会計不正リスクなどが高まる。では、安倍内閣の目論見どおり景気回復が本格化するとしたら不正リスクは低下するかというと、そうとは限らない。

「全幅の信頼」は禁物

   2013年のコラムでは、「できる人に任せきり」にして不正の機会を放置した事例をいくつも紹介したが、このパターンは景気拡大局面でも要注意だ。業務量が増えて多忙になるが、コスト削減要請により人員増は望みにくい。そのような状況では管理職のチェックが甘くなり、「任せきり」の落とし穴にはまりやすくなる。いかに仕事のできる部下であっても「全幅の信頼」は禁物だ。

   また、景気が良くなると給料アップなどを求めた転職が増え、「転職先への『手土産』として機密情報を持ち出されるリスク」や「前職で不正を犯した者を雇ってしまうリスク」などが高まる。人材の流動化が不正リスクに及ぼす影響にも感度を高める必要がある。

   さらに、市場拡大や低コストを求めた海外進出が増えると、海外子会社における不正リスクが自ずと高まる。進出国の法規制や文化を十分理解しないままに、現地スタッフやエージェントに任せきりにした結果、痛い目に遭う企業が少なくない。特に、外国公務員への贈賄については、役職員の逮捕や巨額の課徴金に至るリスクが高まっているので要注意だ。

甘粕潔(あまかす・きよし)
1965年生まれ。公認不正検査士(CFE)。地方銀行、リスク管理支援会社勤務を経て現職。企業倫理・不祥事防止に関する研修講師、コンプライアンス態勢強化支援等に従事。企業の社外監査役、コンプライアンス委員、大学院講師等も歴任。『よくわかる金融機関の不祥事件対策』(共著)、『企業不正対策ハンドブック-防止と発見』(共訳)ほか。
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