あけましておめでとうございます。新たな年の企業運営をスタートさせるにあたり、余計な足かせは極力避けたいものです。そんな足かせのひとつに、昨今話題の「ブラック騒動」があります。言われなき、あるいは意図せぬ「ブラック騒動」に巻き込まれないために、日常から経営者は何をどう心がけていくべきなのか、年初に際して考えてみたいと思います。
私自身も昨2013年、複数の経営者から「うちの会社がブラック企業だと言われて困っている」という相談を受けました。「ブラック」という言葉は以前から存在はしていたものの、昨年は関連する書籍がベストセラーになったり、雑誌やネットで「どこそこの会社はブラックだ」と話題になったり、ややもすると「ブラック」という言葉が一人歩きして、ホワイトな企業でも「ブラック」の汚名を着せられる「ブラック騒動」が続発したのも事実です。
企業側の"辞め際対応"に問題ありのケースが大半
まず何故に「ブラック騒動」は起きるのか、を考えてみます。私が知る「ブラック騒動」はそのほとんどが、退職した従業員とその周囲の人間が発信源と思われます。「業界内で悪い噂を流された」「ネットの掲示板に社名を出して書き込まれた」などが騒動の実態なのですが、よくよく原因を突き詰めてみると、辞めた従業員に対する企業側の"辞め際対応"に問題ありのケースが大半だったりするのです。
例えば、解雇社員の吹聴で業界内「ブラック騒動」に巻き込まれた中小企業のA社社長は、「ほとんど仕事をしなかったくせに、逆恨みだ」と言っていましたが、話を聞いてみると同社の"辞め際対応"が最悪でした。解雇理由は一応、「業務中にPCで仕事に無関係のサイトばかり見るなど勤務態度に重大な問題あり」という就業規則違反なのですが、都度の注意だけで十分な事前警告を発していない、一方的な解雇通告によりやめさせた、社長が直接話をしていない等々、相手の神経を逆なでするやり方のオンパレードだったのです。
まずは事前にことの重大さを伝え、「未改善時解雇警告」を複数回発し、それでも改善しない場合は本人と話し合いを持って退社を促す、200人規模までの会社なら最終的にはトップが直接面談して会社の考え方と本人の姿勢が合致しないことをしっかりと伝える、等々の努力が必要です。たとえ会社側に解雇の正当性があろうとも、トップの「そんな奴はクビにしろ!」の一言で解雇などという荒っぽいやり方をすれば、逆恨みを買うこともありうるということなのです。
このような定番の「不当解雇」騒動とは別に、私が見てきた「ブラック騒動」の問題告発トップ3は、「長時間労働とサービス残業」「休みが取れない」「精神的ダメージ」です。これらの騒ぎが起きる背景には、大手企業で従業員や元従業員から訴訟を起こされて新聞沙汰やネットで話題になると、別の会社で自社に不満を抱える従業員が「自分もそうだ!うちの会社もブラックだ!」と短絡的に思うという構造があります。経営者は、これら労働時間や休暇実態、パワハラの有無などの実態管理には、日常から大きな関心を向ける必要があるのです。
要注意「ワンマン経営のイエスマン管理者の管理下」
その際にポイントになるのは、管理者です。企業が意図的に法令違反を犯すのは完全「ブラック」ですが、経営者の預かり知らぬところで法令違反が起きていることも間々あります。その原因として非常に多いのが、管理者の人事管理面における法令知識不足なのです。
飲食チェーンのB社は、ネット掲示板で、「労働環境劣悪のブラック企業」として元従業員によるものと思われる書き込みが発覚し、大騒ぎになりました。社長は当初、「うちは法令違反をしているような労働管理は一切していない。犯人を探し出して名誉毀損で訴えてやる!」と怒りが収まらない様子でした。
しかしいろいろ調べてみると、社長から残業削減を命じられた店長が部下に暗にサービス残業を強いるような発言をしていたり、一部現場で休日出勤の代休が取りにくい環境だったことが判明したり、繁忙期の長時間労働が黙認されていたり。店長の労働管理の基礎知識不足による、法令違反にも問われかねない杜撰な管理実態が、いろいろ明らかになったのです。
経営者が法令違反やそれに近い労働環境を作る意図がなくとも、管理者の知識や意識が不足することで、結果として思わぬ「ブラック」環境を作ってしまい、意図せざる「ブラック」企業になってしまっていることもあるのです。特に、ワンマン経営のイエスマン管理者の管理下においては、経営者にいい顔をしようとするあまり無理な労働環境を部下に押し付けることもありますので、ワンマン社長様は要注意です。
いわゆる反社会的勢力でない限り、意図した「ブラック」企業はほとんどないと思いますが、意図せざるブラック化などによりブラック疑惑をかけられることは、企業活動においてマイナス以外の何ものでもありません。経営者の皆様には、「ブラック」疑惑をかけられないための注意を十分に払いつつ、今年もホワイトな企業として業績の伸展に邁進していただきたく思います。(大関暁夫)