「終身雇用」でプロ野球に常勝チームが誕生!? ブラックユーモアあふれる日本経済批判

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   もしプロ野球界に終身雇用制が導入されたら――そんな「近未来」を小説仕立てで描きながら、筆者の城繁幸氏が日本の終身雇用制の問題点をえぐる。各所にブラックユーモア(強烈な皮肉?)がちりばめられている。

   物語は、組合員約680万人を擁する、労働組合の中央組織「連合」が、球団を買収し、「史上初の終身雇用球団」を立ち上げるところから始まる。他球団が導入する年俸制よりも、そのシステムが優れていることを証明するのが目的だ。連合事務局に出向中だった山田明男は、出身母体の日の丸電機へ戻れるものと考えていたが、連合が買収した球団の管理部長への転身を命じられる。

「日本型雇用が年俸制に勝ることを天下に示すのだ」

『それゆけ!連合ユニオンズ』(上)
『それゆけ!連合ユニオンズ』(上)

――「ところで細井部長、わたくしはどちらの部長職を拝命するのでしょう?」

「まあまあ、辞令を読みたまえ」

   辞令の下には、聞いたことのない会社名が印刷されている。

「連合ユニオンズ……?こんな会社、うちのグループにありましたっけ?」
(中略)
「そう!それを見込んで君にお願いしたいのだよ。実はね、このたび我が連合は、横須賀ベイブルースを買収することを決定したのだ。ついては、フロントの裏方の責任者を君に一任したい」
(中略)
「我々は横須賀ベイブルースを連合ユニオンズとして再生させる。ただ勝たせるだけではない。史上初の終身雇用球団として!そして、日本型雇用が年俸制に勝ることを天下に示すのだ。君はそのための裏方を一手に仕切ってもらうことになる」
「ま、まじですか……!?」
「日の丸電機としても、全力でバックアップする予定だから、大船に乗った気でいるといい。うちはなんたって労使協調が売りだからな。ワッハッハ」

   「サラリーマンなんて言われたことやってれば楽勝だろ」が信条の山田君に、とんでもないミッションが与えられてしまった。どうなる山田君。どうなる連合ユニオンズ!?

   箴言:

   言われたことだけやるという姿勢は楽ではあるが、ある日とんでもなく理不尽な仕事が降ってくることがある。

(城繁幸『それゆけ!連合ユニオンズ』(上)第1話最後半、スペースシップ)


(会社ウォッチ編集部のひとこと)

   今回は、年末特別企画として、「新書」ではなく、電子書籍を取り挙げた。2011年7~9月にメールマガジン(ビジスパ)で配信したものを2013年9月に3分冊で発行した。話は球場を飛び出し、政治家やマスコミ、外資も巻き込む場外戦に発展する。野球チーム「連合ユニオンズ」は、いや日本社会は、「終身雇用」とどう向き合うべきなのか。物語の結末は果たして……。

   著者の城氏(人事コンサルティング「Joe's Labo」代表)は、『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社新書)、『7割は課長にさえなれません』(PHP新書)などで知られる。J-CAST会社ウォッチで「29歳の働く君へ~いまからでも遅くない!」を連載中。

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