制服を着て学業に励み、友達の交流を楽しむ10代の「裏の顔」は社長だった――。こんな「高校生起業家」が、しばしばメディアで取り上げられている。
若い感性で独自のビジネスを運営する有望な人材を育てようと、支援に乗り出した自治体も登場している。
高校生だけのコーヒーショップ「手を抜くこと許さない」
私立高校1年生の椎木里佳さんは2013年2月14日、中学在学中に自らの会社を立ち上げた。スマートフォンのアプリ開発を手掛けるほか、自ら企画、制作、主演による動画配信、イベント企画などを事業の柱とする。ただし企業サイトには「『かわいいを社会に発信』をテーマに、現在ビジネスプランを考え中です」とある。本格始動はこれからだ。
2013年5月には、サイバーエージェントが運営する女子中高生の調査情報発信サイト「JCJK総研」の編集長に就任、自らコラムを執筆している。「週刊SPA!」2013年9月17・24日号では「日本一カワイイ女子高生起業家」と紹介され、米投資家が「シリコンバレーから見てもとても可能性のある魅力的な起業家」と椎木さんを絶賛。トークショーで数百人を前に、堂々と英語で自己紹介や自らの夢を語ったのだという。
和歌山県の高校に通う小幡和輝さんも、若き社長のひとりだ。不登校を経験したが高校入学後に一転、自らの経験を語る一方で悩みを抱える若者の話を聞くようになり、講演活動やイベントを企画するようになる。2013年2月に会社を設立、高校生だけで企画、運営するカフェを営業している。「正スタッフ」には営業当日の業務のみならずメニューの企画などを決める会議への出席を課す。ボランティア参加だが、「お客様からお金を頂く以上は、ボランティアだからと言って手を抜くことは許されませんので、厳しく注意することもあるかもしれません」と引き締めるところが、経営者としての責任をしっかり感じてビジネスの世界に飛び込んだ証拠だろう。
12月20日には、地元の大学に進学が決まったとブログで報告した小幡さん。来年からは「大学生社長」として活躍することになる。
広島県では高校生が「事業プラン」を計画、実施
日本経済新聞電子版は12月3日、「卒業後では遅い?高まる大学・高校生の起業熱」と題した記事を配信した。ベンチャー企業が投資を募るイベントの様子が書かれており、数こそ少ないものの高校生も参加していたという。そのひとり、現在高校1年生の三上洋一郎さんは中学3年生のときにウェブサービスやアプリ開発の会社を設立した。投資会社からの出資を受け、現在は通学の傍ら放課後には「社長業」にいそしむ毎日だという。
若いうちから企業経営に目を向けてもらおうと、自治体も支援に乗り出した。大阪府は11月7日、「高校生を対象とした起業家派遣事業」を実施した。府内の高校にベンチャー企業の経営者が訪問、社長としての体験談を披露したり高校生からの質問に答えたりして交流した。広く「起業とは何か」の理解を深めてもらおうとの試みだ。
広島県では、高校生の「起業家精神」育成事業を行う。2012年度は6回の「ビジネスプラン作成セミナー」を開催して高校16校が参加した。この期間、県内の企業や商店街の協力を得ながら高校生が起業に関する基本的なスキルを学び、具体的なビジネスプランを練った。13年2月2日には各校が完成版のプランを発表し、起業家らの審査に通った11校が「高校生起業活動実践校」に決定、13年度から支援を受けながら計画を実行している。高校生は自分たちの力で事業経験を積むことができ、県としては地域活性化にもつなげたいとの期待があるようだ。