ビジネストークにも「ドレスコード」がある 「OBゾーン」を見極めよう

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   親しき仲にも礼儀ありという言葉があります。ところが、礼儀正し過ぎると

「あまりに堅苦し過ぎて、距離を感じる」

とマイナスになることも。そこで、礼儀正しく、かつ親しげに相手の懐に飛び込む…と相反するようなバランス感覚で相手に接することが出来るのがビジネスで成功する人間関係構築のセオリー。

礼儀は守りながらも、くだけた感じを出す

「OBゾーン」はどこから?
「OBゾーン」はどこから?

   ところが、バランス感覚がとても難しい。まず相手との信頼関係を築いて、自分との距離を縮めなければ、話を聞いてくれません。しかし、あまりに近づきすぎても馴れ馴れしいと思われてしまいます。たとえば、あなたが売り込まれる立場だとして、「この人は大丈夫そうだな」と相手を信頼し始めたときに、先方がそれまでのきちんとした言葉遣いから一転して、

「いいじゃないっスか。思い切ってやっちゃいましょうよ!」

と言ってバンと肩を叩いてきたら、不快になるでしょう。あるいは、いきなり「○○ちゃん」と呼ばれたら、ムッとするでしょう。

   相手がリラックスできる状態を作るために、互いの距離を近づける言葉や行動は大切。しかし、ある一線を越えると、「こいつは礼儀がなってない」とか「常識がない」と、マイナスの印象を持たれてしまうリスクがあります。相手にとって「こういう言動は馴れ馴れしく感じられるだろう」「図々しいと思われるだろう」というゾーンを考えて、設定しておく。ゴルフで言うところの「OBゾーン」。そこに踏み込まないようにしながら、少し親しげな態度を取るのです。

   OBゾーンは、人によってさまざまです。相手はどこまで踏み込んだら気分を害するのか、それをよく見極めなければいけません。そのOBゾーンに入らないようにしながら、自分をフォーマルでない状態に持っていきます。礼儀は守りながらも、くだけた感じを出すのです。

   「ドレスコード」というものがあります。これは、特定の場所で何を着るかに関する決まりですが、決して細かいものではなく、大まかな決まりです。たとえば高級レストランやホテルのパーティーなどで、「ジャケットを着用」というドレスコードを設定されることがありますが、この場合、「ジャケットを着る」という一線は守っていれば、色やデザインは派手でも地味でも、自分で自由に決めて構わないのです。

「フォーマルな人」と「フランクな人」

   人間関係でも、ドレスコードと同じような大まかな決まりを作っておくとよいでしょう。たとえば、目上の人に対しては、「敬語を使う」というコードを設定する。社内の上司に対しては、「役職やさん付けで呼ぶ」というコードを設定する。そして一度設定したら、それは絶対に守るのです。守った上で親しげに振る舞い、距離を近づけていくことが大切です。

   売り込む相手に対しても同じようにします。接し方について大きな一線を決めて、それを越えるOBゾーンには踏み込まない。どんなに親しくても、酒の席であっても、崩さない。適度に礼儀正しく振る舞い、決して「それって面白いじゃん」「かなりやばくね?」「○○チャン」などとは言わない。OBゾーンに入らない範囲の中で親しげに接するわけです。

   これがうまくできるようになれば、売り込みの成功率も高くなります。

   また、フランクな人にもOBゾーンはあります。問題は、OBゾーンの見極めです。私がこれまで多種多様な社会人を見てきて思うのは、人間は大きく二パターンに分かれるということ。「フォーマルな人」と「フランクな人」です。

   一般的に、フォーマルな人は形式を大事にするので、礼儀に厳しく、敬語の使い方にもうるさいことが多い。当然、OBゾーンは狭くなります。

   一方、フランクな人はOBゾーンが広くなりますが、それでもまったくないわけではありません。フランクな人の中にもOBゾーンはあります。

   気さくな感じの上司から「何でも率直に意見を言ってくれ」と言われ、「この人なら突っ込んでも大丈夫だろう」と思って、つい遠慮なく「部長がやってるあんなプロジェクト、ダメなんじゃないすか」と批判したらカンカンに怒られた、といったことはよくあります。誰にでもOBゾーンがあると思っておけば、まず間違いありません。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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