就職を意識する大学生の間で、グローバル志向が高まりをみせている。就職ジャーナルの調査(2013年9月発表)によると、大学1年生の31.4%が「海外で働きたい」と回答している。さらに、実際に就活を始めた大学4年生の59.8%と、半数以上が「将来、海外で通用する人材になりたい」と答えた調査(2012年1月発表)もある。
「世界で通用する人間になりたい」
学生たちが海外での仕事に関心を寄せる理由はさまざまだ。同上の調査では、
「翻訳の仕事を通じて、海外の書籍を日本に紹介したい」(文学部・女子学生)
「海外で日本人のサポートがしたいので、空港か旅行会社に勤めたい」(女性・国際経営学部)
「休暇制度がしっかりしている海外で働いて、余暇もたっぷり楽しみたい」(女性・看護学部)
といった具体的な就社のイメージまでは至っていない意見から、しっかりした目標があるものまで幅広く寄せられている。
リクルートの就職情報サイト「リクナビ」の岡崎仁美編集長は、大学生のなかで、世界で通用する人間になりたい、という志向が強まっているように感じるという。
実際、2012年に経済産業省から同社が企画・運営を受託した「GLAC」というグローバルインターンシップには、「意欲が旺盛で優秀な学生から多数の応募があった」とのことで、海外で働きたいという学生の意欲が高まっていることがうかがえる。
岡崎氏によると、近ごろの学生は、海外の中でもアジアに目を向けている。自身がその国の発展に貢献し、発展するさまをリアルに体感していきたい、という思いと重なる場所がアジアだ、というのがその理由のようだ。
「今後はアジアの中でもすでに発展している国よりは、これからダイナミックな発展・成長が望めるベトナムやミャンマーなどにも、注目が集まると思います。これまで、海外就職は欧米から日本に学問や知識、最先端の技術を取り入れる"輸入"という意味でしたが、今は逆の"輸出"という意味で日本の文化や商品サービスを広めたいという意味合いも強くなっていると感じます」
「グローバル強迫観念」に陥っている?
海外インターンシップに参加した学生の中には、「逃げ場がない状態に自らを追い込むことで、国内では得られない体験ができた、一皮むける経験ができた」と言う学生もいたという。
こうした経験は人生において糧になるとは言え、岡崎氏は学生があまりにも「グローバル人材」という言葉を意識しすぎて、「グローバル強迫観念」に陥ってしまっているケースもあるのでは、と少し心配している。
「これから求められるであろう『グローバル人材』に自分もならなければ、といった学生の切迫感に『危ういな』と思うこともあるんです。『学生のときから世界を目指していないと、将来食べていけなくなる』といった強迫感とでも言いましょうか。気持ちはわからなくもないのですが、自己成長の方向性は多様であっていいはずなので、『グローバル』という軸に執着しすぎなくとも良いのでは、と感じています」
「グローバル人材にならなくては」と焦るよりも、自然体で「やりたいこと」にたくさんトライしてみるほうが楽しい。インターンシップや海外留学、ワーキングホリデーなど、いまは海外を経験する「橋渡し」となる制度も多くある。早くから多様な体験をすることで、結果として社会に出た時に役に立つこともあるだろう。
いきなり「海外で就職したい」と突き進むよりも、興味を持って多くのことにトライする方が、かえって「グローバル人材」への近道になるのかもしれない。