留学で「英語の勉強が必要」と痛感するのが重要
「AERA」2013年12月2日号では、海外経験や外国人との意思疎通を経験するユニークな試みを行う大学を取り上げた。日本工業大学(埼玉県)は今年、ベトナム研修に25人の学生を派遣した。海外旅行経験者はわずか2人で、誰も英語が得意ではなかった。現地で共同研修をしたベトナム人学生も、英語が母国語ではない。製品の組み立て研修では双方が協力するのだが、お互いに身ぶり手ぶりで技術を伝えあったという。
これだけだと「英語力アップ」の点では不足かもしれない。しかし日本の製造業が海外に進出し、技術力のある人材が必要とされている半面、エンジニアたちは英語を理由に海外勤務を尻込みしてしまう現実がある。そこで大学では、学生が「自分の技術を海外で使う可能性があると気づく」ことを重視した。そこでは「英語力は単語や片言で通じるレベルで十分」と割り切る。
記事では、AJ国際留学支援センター代表の岩﨑宗仁さんのこんな発言を引用している。
「いま求められているのは地球すっぽりのグローバル力。英語力だけ養っていても通用しないのは言うまでもありません」
ただ海外留学や研修を経験するなかで、自分の考えが思うように英語で表現できないもどかしさを一度でも味わえば、「もっと話せるようになりたい」と向上心が生まれるはずだ。日立の川村氏も、効果的な英語上達法として学生時代の海外留学やボランティアを挙げているが、これは「英語の勉強が必要だ」という経験に遭遇させるためだと述べている。近年は学生が「就活に不利」と留学を敬遠する傾向があるようだが、長期的な視点に立てば語学力と討論力の両方を身につけるうえで貴重な経験になるのは間違いないだろう。