日立製作所会長で経団連の教育問題委員長を務める川村隆氏が、日本人の英語力に苦言を呈した。自分なりに英語を駆使して意見を伝えようとする姿勢が欠けているというわけだ。
根本には、討論や対話の訓練不足があると指摘する。机の上の勉強だけでなく、対人コミュニケーションの場数を踏まなければスキルは磨かれない。
海外では「無言」は「無関心、無能」を意味する
川村氏は2013年12月17日付の日本経済新聞朝刊で、就活生に求める資質を語った。小学生から大学生までに何を身につけてほしいかとの問いに、討論や対話の実力を挙げた。学校でのこうした訓練が足りておらず、意見をぶつけ合って世の中にいろいろな見解があると知ってほしいというのだ。
もうひとつの指摘は英語力だ。「日本人の英語アレルギーはひどいと思う」と厳しい。外国の会議で、下手でも英語を使って意見を述べようとする日本人は「10人に1人くらい」。中国人なら全員が何とか話そうとすると対比した。沈黙していると周りからは「話す内容を何も持っていないのではないか」と疑われる恐れがあると憂慮する。語学力向上だけでなく、きちんと相手と討論できる力が必要というのだ。
海外経験の豊富なプロの女性通訳に取材すると、「海外では多くの場合、無言は無関心や無能を意味するのは確かです」と川村氏の発言を裏付ける。幼少期から自分なりの意見を表明するように教えられ、他人が自分と違う意見を持っていてもむしろ当たり前だと受け入れるそうだ。当然、議論にも慣れていく。
日本人の場合は普段の業務で英語を使っていない限り、外国人と英語でビジネストークを交わすことに慣れていない。言葉自体が分からないうえ、討論の訓練を受けていないとすればひたすら貝のように黙るしかない。すると周囲からは「ダメな人」の烙印を押される。いいことなしだ。
「会社ウォッチ」では11月16日、「ビジネス英語は「不完全」で構わない 単語の羅列でもいい、とにかくしゃべれ」という記事を配信した。最初はカタカナ英語でもいいから、ひるまずにコミュニケーションを図る努力をする大切さを説いたものだ。それでも一歩を踏み出すには度胸が必要だろう。先のプロ通訳は「初めは1回の発言でも、徐々に回数を増やしてみては」とアドバイスする。長々としゃべろうとせず、結論を含めて端的に発言した方がかえって好ましいそうだ。