管理職の腕の見せ所
まず、受注前に「商流」と「物流」を確認することが欠かせない。どこから仕入れてどこに販売するのか、エンドユーザーは誰か、「仕入先であるはずの相手に販売する」などの不自然な流れはないか、実際の商品の流れはどうなるのかなどを、営業から独立した審査部門などが厳しくチェックする。たとえ、バリバリ実績をあげている担当者が取ってきた案件であっても、本人の説明を鵜呑みにしてはならない。
例えば、上記B社では、再発防止策として「商談確認シート」によりチェックポイントを明確化し、確認が終わるまで取引を承認しないようにした。
加えて「出口チェック」として、商品・サービス納入後に販売先にフォローアップの連絡をすることも有効だ。A社では、施行工程を写真で確認するとともに、検収後にはお客様相談室(本社)から契約先に「お礼の電話」を必ず入れるようにしたそうだ。
このようなフォローアップの取組みは、金融機関でも実践されている。投資信託や保険を購入した顧客あてに担当者の上司が電話をかけて、お客さまの満足度を確認すると同時に、販売時の説明が適切に行われたかどうかを確認することにより、コンプライアンス違反の防止・発見に活かすのである。業種を問わず、参考になる「一手間」ではないか。
合わせて、コンプライアンス違反に関する通報・相談窓口を取引先にも開放しておけば、会社の目が行き届かない所で行われる不正についての情報を得られる可能性が高まる。
ただし、当たり前だが、どんな仕組みも、徹底されなければ意味がない。「上司がチェックすることになっていたが、実質的には担当者に任せきりで……」という反省がいかに多いことか。部下を信じ切ることなく、懐疑的な目をもってチェックできるかどうかが、管理職の腕の見せ所だ。(甘粕 潔)