臨床心理士 尾崎健一の視点
問われる「相談を受けた会社側」の対応
やはり本件はセクハラにあたるでしょう。しかし、もし抗議しようとした場合、行為者が顧客であることから取引への影響を考えてしまうのも無理はありません。
大切なのはAくんに対する会社側の対応です。取引を優先して顧客のセクハラ行為を容認する前に、Aくんの「不快だと思う気持ち」に共感することが第一歩です。職場のハラスメントが会社への訴訟に発展するケースの多くは「上司や会社側に相談したのに、まともに取り合わない会社の対応が不満だ」というものです。被害者の気持ちを真摯に受け止めた上で、対応策を考えましょう。
今回の場合、上司のセクハラに対する認識が不十分なようですから、会社側からしっかり指導しましょう。会社全体としてハラスメントに対する認識が甘い場合は、この上司だけでなく会社全員に対する啓発活動が必要です。
本人が苦痛であって、かつ会社としても顧客との取引を守る必要がある場合は、担当者の変更を検討することもあります。