グローバルに働くには、英語が先か、仕事のスキルが先か?

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   日本人にとって大きな課題である「英語」について何回かにわけて連載しています。筆者が訪れたのはフィリピンのセブ島にある、英語学校のサウスピーク。

   ここで、留学中の20人ほどのかたと議論をしました。

「これから日本人が海外とかかわることが増えていくように思います。一方、ビジネススキルがあれば、英語なんて不要だ!という話があるけれども、どう思いますか?」

   語学とスキルどっちが大事か、という古典的な質問を投げかけてみました。

   みなさんはどう思いますか?

「そのうち語学はgoogle翻訳とかでなんとかなるように…」

「中間レベルの英語」は、自動車運転のスキルと同じようなもの!?
「中間レベルの英語」は、自動車運転のスキルと同じようなもの!?

   挙手をしてもらうと、全体的には語学学校ということもあり、語学が大事だという人のほうが多かったですが、それでもスキルが大事だという人もかなりいました。

   まずは、スキルが大事だという人のご意見から。

「すごいスキルや技術があるひとは、通訳をつけてくれる」
「帰国子女で、英語はペラペラだけど、仕事はまったくできないひともいる」
「アジアではたらくには英語よりも、むしろ現地語のほうが大事だときいている」
「実はそのうち語学はgoogle翻訳とかでなんとかなるようになるのでは……(と期待したい)」

といった声が上がりました。

   一方、英語が大事という意見では、

「いちいち通訳をつけていたら仕事にならない。通訳を付けることができるくらいのひとはいいけど、担当者レベルは言葉を喋れないと仕事にならない」
「日本で働いていても、上司が外国人になる可能性がある。英語ができないと、昇進できないかもしれない」
「近いうちに海外で働きたいと考えているので、英語は大事。私の場合、スキルがあまりないので、まずは英語くらいはできないと」

といったものがありました。

両極端なスキル重視派と英語重視派

   ネットで交わされる一般的な議論をみると、スキル重視派、英語重視派、どちらも極端です。

   スキル重視派は、際立ったスキルがあれば英語なんていらないといいます。しかし、これが成り立ったのは、英語ができなくても昇進できた昭和時代の役員ぐらいなものでしょう。

   現在では、際立ったスキルを蓄積したり、通訳がつけられるようなポジションに昇進したりするまでの過程で、すでに英語が必要になってきているというのが実情です。

   プロスポーツ選手でも実は同じです。プロ野球リーグで大活躍した投手は、メジャーリーグに移籍すれば専属通訳をつけてくれると思いますが、大学を卒業して単身メジャーリーグに挑んで渡米するようなひとは、勝ち星を上げる前に英語をしゃべる必要があります。

   片や、英語重視派の意見も極端です。英語は、ネイティブレベルでないとだめだ、ネイティブ以外の英語はビジネスでは通用しない、といった意見になります。欧米人と対等に張り合うくらいの英語力がなくては、まったく意味がないといったような感じです。

   いったい、どっちなのでしょうか?

   結局のところ、サウスピーク塾長の柴田@HAL_J氏の 、当たり前の意見が、留学生のみなさんの気持ちを的確に代弁しているように思いました。

「英語なんて、大した技能ではない。パソコンや自動車の運転と一緒。だれでもできる技能になりつつある。だからこそすでに日本社会でも英語が出来ることがプラス評価になるのではなく、英語が出来ないことがマイナス評価になってきている。英語なんてその程度の技能に過ぎない」

   つまり、パソコンや自動車運転の例でいうと、こういうことです。

   スキル重視派は、パソコンや自動車運転ができなくても、有能なら秘書がメールを打ってくれるし、運転手もいる、といっているわけです。

   一方で、英語重視派は、スーパープログラマレベルで鈴鹿サーキットで300kmで自動車を走らせる事ができなければ、そもそもスキルを磨いても仕方ないといっているようなものです。

中間レベルの英語はひとつのスキル

   なにも英語が必要なすべてのひとが、欧米ネイティブに囲まれて、ネイティブの早口英語についていかないと仕事にならないわけではありません。

   かと言って、キーボードが打てないとか、ハンドルを握ったことがないレベルだと、それはそれで、困るというのが実情でしょう。

   なぜこのような当たり前のことが、英語に関してだと、極端な話になってしまうのでしょうか。

   確かに以前は、英語というのは、英語ネイティブの国でネイティブに囲まれて仕事をするためのものでした。だから、中途半端な英語力を身につけても役に立たないといわれました。

   ただ、そういうグローバルの頂点をめざすのはほんの一部です。

   一方で、多くの日本のビジネスマンにとっての新しい課題は、シンガポールや香港に拠点をつくったり、アジアの企業と交渉したり、老後フィリピンやマレーシアに居住したり。そういう需要がとても高まっているのだと思います。

   そういう場面では、完璧なネイティブレベルの英語は不要。かといって、片言レベルでも困ります。

   多くのひとにとって、日常会話以上かつ、英語ネイティブ未満の、いわゆる中間レベルの英語を身につける必要性が上がってきました。

   そして、英語かスキルか?という最初の議論に戻りますと、結論は、

   「中間レベルの英語はひとつのスキル。他のスキル同様に身につけないとスキルがないと捉えられてしまうのでは?」ということ。

   語学ととらえるからややこしくなるのであって、結局英語もツールであり、スキル派の人が重視するスキルの一部になってきているのです。(大石哲之)

グローバルに働くには、英語が先か、仕事のスキルが先か?
(ネイティブ並みの)英語
スキル
中間レベルの英語はひとつのスキル
どちらも不要。気合いと根性だ
その他
大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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