就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが2013年11月に学生の登録受付を開始した「OpenES」。就活で企業から求められる「エントリーシート」をウェブ上で統一書式化して提出できるようにし、何枚も作成する手間を省くメリットを訴える。
半面、オンライン化により企業にはこれまで以上に大量のエントリーシートが送付される可能性や、目玉機能である「紹介文」の扱い方を巡って大学関係者に戸惑いが広がっているとの指摘もある。
第三者による紹介文のはずが「自分でも編集可能」
リクルートキャリアによると、学生がエントリーシートを提出する企業は平均22社に上る。氏名や住所、学歴、資格といった基本事項や、学業で取り組んだこと、自己PRといった内容は志望先が違っても記述事項が共通なので、同じフォーマットでも構わない。そこでOpenESに1度登録すれば、複数の企業に利用できるので貴重な時間を効率的に使えるようになるという。リクナビでは、OpenESを導入する企業は3000社以上となっている。
ひとつの特徴が「紹介文」という機能だ。自分の「人物像」を第三者に説明してもらうもので、公式サイトによるとサークルやアルバイト先、ボランティア活動で一緒だった先輩や友人といった自分をよく知る人に依頼して、個性や特徴を具体的エピソード付で書いてもらうとよいそうだ。推薦文というよりは「他己紹介」といったところか。だが人材コンサルタントの常見陽平氏は2013年12月10日付のブログで、この機能が「ずさん」と指摘した。
最も問題視したのは、友人らが書いた紹介文が自分で編集できてしまう点。執筆を依頼する場合、その人のメールアドレスをOpenESの画面に入力、送信する。メールを受け取った人は専用URLが送られており、そこにアクセスして文章を書き込む仕組みだ。常見氏は、URLを転送したり、メールアドレスを自分宛にしたりすれば「誰でも編集できてしまう」と説明する。これなら「なりすまし」も可能というのだ。
また紹介文の執筆者は、自分の氏名や所属、メールアドレスといった個人情報が記載されるが、OpenESがどの企業に提出されるかは分からない。「ブラック企業に個人情報がわたる、個人情報が悪用されるなどのリスクがある」という。
注意書きで「原則、教授や職員への依頼は控えましょう」
常見氏はJ-CASTニュースの取材に対し、「(OpenESに)どう対応するか悩んでいる大学があります。大学教職員の団体などは、抗議を検討しているとも聞いています」と話す。
実はリクナビでは、紹介文を依頼するにあたって「大学推薦や教授推薦とは異なるため、原則、教授や職員(キャリアセンター・就職課)への依頼は控えましょう」とわざわざ注意書きを付けている。常見氏はブログで「普段からの学生のことを最も知っている(はず)なのは、指導教官ではないか」と疑問を呈する。執筆者を探す手間もばかにならず、学生の時間節約になるはずが、かえって負担になりかねないという。
だが、すでにOpenESは12月1日からサービスが始まっており、利用者は少なくないだろう。紹介文機能に改良の余地はないだろうか。常見氏は「システムとしてなりすましリスク、個人情報の意図せざる流出リスクを避け、一次品質を確保するとともに丁寧な説明が必要だと思います」と述べた。
一方ネット上では、何種類もエントリーシートを作ることから解放されるメリットや、紹介文をもらうことを通した自己分析の深まりに期待を寄せる声もある。