ニコニコ動画を運営するドワンゴが、2015年卒の新卒採用から手数料2525円を徴収する有料方式(首都圏1都3県在住者限定)に移行するそうだ。曰く「本気の学生にのみ受けに来てほしいから」とのこと。手数料自体は全額寄付するそうなので、学生の本気度を試したいという理由は本当だろう。では、手数料の発生により、具体的に何が起こるのだろうか。
たとえば、東京大学法学部3年生の山本君という学生がいるとする。彼はストレートで東大に入った秀才だが、学生時代はブラブラして過ごし、さてこれから就職活動でも始めるか、くらいの余裕のある人間だ。当たり前の話だが、彼はエントリーするだけでいちいち金のかかるしちめんどくさい企業なんて絶対受けないだろう。
無料でひーひー言いながらやっているのには理由がある
一方、大学は誰も知らないようなFランク大だが、普段からニコニコ動画が大好きで、ずっとこの会社でサービスに携われる仕事がしたいと考えていた鈴木君がいたとする。彼にとってドワンゴ応募有料化のニュースは朗報だ。山本君のようなポテンシャルは極めて高いがやる気の無いライバルが消え、競争倍率が下がるためだ。
もちろん内定まで到達できるかどうかは本人次第だが、無料時代と比べればその確率は格段にアップするに違いない。鈴木君のような学生にとってもドワンゴにとってもハッピーな話だろう。
ところで、一つ疑問が残る。日本には、ドワンゴよりずっと多くの学生がエントリーし、倍率が100倍を超えるような大企業も珍しくない。春先にはエントリーシートの山を抱えて採用担当が疲弊しきっているはずだ。なぜそういう会社は今まで有料化しなかったのだろうか。それとも単に気付かなかっただけで、来年あたりから続々有料化し始めるのだろうか。
実は彼らが無料でひーひー言いながらやっているのには理由があり、当面は有料化のような敷居の引き上げも行わないはずだ(有料化したいと思う人は大勢いるだろうが)。
終身雇用を維持するには、会社は従業員を将棋の駒のごとく、人の余っている事業所から人手の足りない事業所へ移したり、たたむ事業から黒字の事業に配置転換したりする必要がある。そう考えると(有料化後にやってくるであろう)入社段階で特定の事業やサービスに強いこだわりのある人材は、そもそも終身雇用型カルチャーとは相性が良くないというのがわかるだろう。