MBAに中韓学生が殺到、日本人は激減 「彼ら」がそこまでハングリーな理由

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   MBAに合格した後の2012年夏、英語が得意でない留学生のためのサマースクールに参加すべく渡米しました。そこで驚いたのは、各国からの留学生の人数構成でした。

   同級生に聞いた私たちのMBAプログラムの人数比は、次のようなものでした。学年全体で500人、うちインド人が50人、中国人が30人、ロシア圏が20人、南米が20人、韓国・台湾が15人ずつ。そして日本人は…たったの6人! かつては学年の10%以上を日本人が占める学校もあった一方で、現在全米のトップ10スクールと呼ばれる学校にいる日本人は、合計で学年100人弱。なぜ日本人MBA学生はこれほど激減したのでしょうか?

日本人はなぜMBAから離れたのか?

留学生の内訳。アジア人だけで優に100人を超える
留学生の内訳。アジア人だけで優に100人を超える

   まずは日本経済の低迷が挙げられるでしょう。MBAは、目玉が飛び出るほどお金がかかります。学費が2年間で1000万円、生活費と合わせて合計1500~2000万円は必要です。これを負担して社員を派遣する余裕のある企業が減少したのに加え、自ら費用を工面して留学する学生も減少しました。

   もうひとつは、モチベーションの違いです。世界で会社のお金で社員をMBAに派遣しているのは日本と韓国だけで、それ以外の人は教育ローンなどでお金を工面しています。投資というリスクを取ってキャリアチェンジしたい、自分で事業を立ち上げたいという野心を持った学生に対して、日本からの留学生の多くは派遣生で、のほほんとした存在です。「日本人はクラスに貢献しないでゴルフばかりしているので合格人数を減らした」という学校の噂も耳にしました。このミスマッチングも原因のひとつでしょう。

かつて日本人はクラスで固まって座っていたが、今は違う

   アジア人の私たちの学年に占める比率は20%以上。インド、中国、韓国でのMBA受験の倍率は年々高くなっています。では、なぜアジア人がMBAに殺到しているのでしょうか?

   まず、自国では1000万円を超える給与がもらえる仕事はほとんどないという現状が挙げられます。まさにアメリカンドリームを追い求めて留学しているのですが、アジア人留学生がアメリカで就職するのは大変です。英語の壁があるし、金融危機以降、米企業はアメリカ人の雇用を守ろうとしています。これを乗り越えて就職を勝ち取り高給を手にした同級生を見るとたくましさを感じます。

   こうしたハングリー精神に負けて日本人は減少していくのでしょうか?私はそうは思いません。血の滲む努力をして入学し学んできた直近のMBA生が底力を見せることでMBAは再び脚光を浴びるでしょう。

   日本人が少ないからこその学びもあります。ある教授の言葉が印象的です。「10年前、日本人は一大勢力で、クラスで固まって座り、授業で質問されると周りの日本人に相談してから答えていた。今は違う。クラスでバラバラに座って自信を持って自分の意見を述べている。今固まって座っているのは中国、韓国からの学生たちだ」。

   私は、必修のクラス80人強の中でただ一人の日本人でした。誰も仲間がいない環境は最初は苦労しましたが、その分、日本で仕事を続けていたら得られなかったサバイバル力を得られたと思っています。(室健)

室 健(むろ・たけし)
1978年生まれ。東京大学工学部建築学科卒、同大学院修了。2003年博報堂入社。プランナーとして自動車、電機、ヘルスケア業界のPR、マーケティング、ブランディングの戦略立案を行う。現在は「日本企業のグローバル・マーケティングの変革」「日本のクリエイティビティの世界展開」をテーマに米ミシガン大学MBAプログラムに社費留学中(2014年5月卒業予定)。主な実績としてカンヌ国際クリエイティビティ・フェスティバルPR部門シルバー、日本広告業協会懸賞論文入選など。
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