誠実で地道な努力を一番の人事評価項目に
人の行動は、自分が何によって評価されるかにより左右される。企業では、人事評価項目がプレッシャーやインセンティブの源になり、不正リスクにも大きな影響を及ぼす。
巡査部長の供述からみて、警察官の評価項目として「犯罪摘発件数」が重要な要素になっていると考えられるが、それが行き過ぎると「なんとしても摘発件数を上げろ」というプレッシャーが蔓延し、今回のような極端な行動をとる警察官を出してしまう。検察による証拠ねつ造や自白の強要といった問題の背後にも、「何としても有罪にしろ」という同じような強い力がはたらいている。
そもそも、「犯罪を未然に防ぐこと」がもっと評価されるべきなのではないか。確かに、犯罪を未然に防いだことをどのように評価するかは難しい。摘発件数という目に見える項目で評価する方が楽だ。しかし、件数を形式的に評価して点数をつけてしまうと、報告書や数字をでっちあげるインセンティブを高めてしまう。件数の上げるためにどんな努力をしたのかにもしっかりと目を配らなければならない。
簡単ではないが、上司が部下の日頃の勤務ぶりに細かく目を配り、地道な行動をきちんと認めて評価に反映させることが大切である。そして、当たり前のことだが、誠実であることを一番の人事評価項目とし、誠実な行動へのインセンティブ、不正の抑止力を高める工夫も必要だ。(甘粕潔)