ボーナスが増えた、減った、出なかった――そんなことが話題になる季節になった。他社のボーナス動向にも関心はあるが、「社内の同期はいくらもらったのか」の方が気になるという人も少なくなさそうだ。
それぞれに悲喜こもごもがあるのは仕方がないことだが、同じ社内で、「あの部署の評価はみんな甘い」「うちの部署はみんな厳しい」といった不満が高まると、穏やかではないようだ。
営業部員Cさん「何で製造企画部のあいつらの評価がいいんだよ!」
製造業の人事です。
賞与の評価の時期が終わりましたが、いくつか問題があがっています。
評価の甘い上司、厳しい上司の差が激しく、社員から不満の声が出ているようです。
製造企画部のA部長は評価が甘く、全体的に良い評価をつけています。
一方で営業部のB部長は評価が厳しく、全体的に低めの評価をつけています。
社員の間でも賞与の時期になるといろいろな噂が飛び交い、営業部の社員の中では不平不満があがっているようです。Cさんはこんなことを言っていたようです。
「製造企画部のヤツらが売れる商品を作らないから、俺達が苦労してるんじゃないか。 俺達が遅くまでやっているのにもかかわらず、早く帰ってるし。何であいつらの評価がいいんだよ!」
Cさんは営業部でも中堅の社員で成果も出しているのですが、評価はそれほど高いわけではありません。Cさんに限らず、営業部で成果を出している人の評価は高くありません。
営業のB部長に評価について確認をすると、
「うちの部署の社員達は、甘やかすとつけあがるからこのくらいでいいんだよ。それに部署としての目標を達成していないんだから、低くて当然じゃないか」
と言われました。確かに一理あるとは思うのですが、人事から見ても、もう少し高くつけても良いのではないかと思える人は数人います。
一方で、製造企画部は遅刻が多いDさんの評価は普通だったりと全体的に甘いので、A部長に確認すると
「D君は遅刻が多いけど夜遅くまで残業してるから仕方ないんだ。だからその辺も考慮してこの評価にしたんだ」
との回答でした。各部署で業務が違うので、評価水準を統一するというのは難しいかもしれませんが、なるべく均衡を保てるようにはしたいと思っています。
このままでは不満が増え、上司に不信感を抱いたり、辞めたりする人が出てくるかもしれません。どうしたらいいでしょうか?
社会保険労務士 野崎大輔の視点
人事考課調整会議を開いて評価の整合性をはかる
上司が適切な評価ができるのが望ましいですが、人が行うので評価の甘辛が生じるのは仕方がないかもしれません。考課者に対して人事考課研修を実施する会社もありますが、なかなかそれだけでは正確に評価できるようになるのは難しいというのが現実です。評価実施後に各部門長を集めて人事考課調整会議を実施し、評価のすり合わせを行うのが良いでしょう。
場合によっては部門長だけでなく、一次考課者も会議に入れた方が良いかもしれません。人事考課調整会議では、評価者同士で評価結果について報告しあい、適切に評価できているかのすり合わせを行います。評価の根拠となった具体的な行動、成果などを基に話し合います。このようなことをやっていくことが考課者訓練にもなり、評価をする際の指標にもなると思います。このような過程を経た後に部下と面談し、なぜこのような評価になったかという根拠を示せるようにしておくことが大事です。部下の改善点、今後の課題等も説明することで評価に対する不信感を軽減することができます
臨床心理士 尾崎健一の視点
評価基準を明文化して社内で共有、差をつけるならインセンティブ制度で
事例では「上司の感覚に任せた評価」で部門を超えた不公平感が蔓延しているようです。部門ごと、職種ごとに評価基準や達成基準を明文書化して、全社に公開するのはいかがでしょうか?基準について全員の納得は難しいかもしれませんが、全社員、全部門に公平に共有された基準であることが重要です。
会社の成り立ちや経営的意向から部門間に力関係が存在することがあります。例えば、製造部門の発言力が強い会社もあれば、営業部門が発言力を持つ会社もあります。評価制度は部門の力関係も理解した上で設計する必要があります。営業は「外へ出るから大変だ」「顧客対応の最前線だから重要視する」として評価に重み付けをする会社もあるでしょう。
しかし、社員の納得が得られない部門間の重み付けの制度はモチベーションを下げることになるので、基本は平等が望ましい姿と言えます。重み付けしたい場合、評価基準は公平にしておいて、インセンティブで差をつけたり社長賞などの不定期な報酬で重み付けをしたりする方法もあります。