日本では、ホテルやレストランなどが安い食材を使っているにもかかわらず、高級食材のように謳う「食品偽装問題」が注目を集めている。一方、スウェーデンでは、「安い食材」を逆手に取ったようなキャンペーンが話題だ。
欧州のスーパーマーケット「Lidl」は、商品の低価格を売りに客を集めているが、それとは表裏一体で商品の質にこだわりたいお客を取り込めないでいた。つまり安いから買いにくる、別にLidlだから買うわけではないというわけだ。
客に黙って安い食材を星付きシェフが料理
そこで「Lidl」はスウェーデンで、期間限定のレストランをオープンした。そのレストランの名前は「DILL」。スーパーの名前のスペルの順番を変えたものだが、普通なら気がつかないだろう。それにしても、なぜスーパーがレストランを開いたのか。
このレストランでは、Lidlで扱っている安い食材を使い、星付きのレストランで働く有名シェフが、9品で50ユーロ(7000円弱)のコースメニューを考案、料理して提供した。そのことはお客には伝えずに、だ。すると、DILLは大好評。オープンの告知から29分で席の予約は満席、3週間・500人のキャンセル待ちとなった。一連の動きを紹介する動画が、1か月ほど前にアップされている。
その後、Lidlはネタばらしをした。すると、地元の情報番組でインタビューが行われるなど400万ユーロ相当のメディア露出、さらにソーシャルメディアなどあらゆる媒体を含めると2400万回以上の言及が行われた。ツイッターでは「その日の話題」に2度も選ばれた。
今の日本でこんなことをしたら、「偽装だ!」と大炎上が起きるだろうか?スウェーデンでも、実際にレストランで食事をした人たちは、もしかしたら怒っているかもしれない。が、ツイッターを見るかぎりポジティブなコメントが多く、どうやら狙い通りパロディーとして受け入れられたようだ。キャンペーンで訴求されるメッセージ「Good food doesn't have to cost more」(良い料理にこれ以上高いお金は払わなくていい)も伝わったかもしれない。
もしかしたら日本人が気にしすぎなのか?いや、外国人がおおらかなだけなのか?スウェーデンのお国柄には合ったということだろう。(岡徳之)