臨床心理士 尾崎健一の視点
実態調査とコンプライアンスの徹底が先決
規制を厳しくする前に、まず実態調査が必要でしょう。会社の創設期は皆が結束し、管理もしやすいものですが、大きくなってくると隅々まで経営者の意識や管理が行き届きにくくなります。「残業が多すぎる」「休みが取れない」といった指摘があるなら、経営陣が本当の勤務実態を把握できているのか再度確認してみることが必要です。例えば、データ上の勤務時間と実態とが乖離していないか、ハラスメントなどの表面化しにくい問題はないかなどを確認しましょう。
また、「どんな会社でもある通常の範囲内」の不満とはどんなものを指すでしょう。社員の声に敏感にならずに会社が大きくなると、経営者と社員の認識のズレが拡大し、思わぬリスクを抱えることになります。無記名の全社アンケートを実施したり、上司部下の定期面談を設けたりして現場の声に耳を傾けましょう。
更に、内部統制機能を設けるなどして、基本的なコンプライアンスを徹底することも望まれます。勤怠管理、休日取得の促進、サービス残業規制、ハラスメント対策、公平な人事制度の構築などを確実に行うことで、「謂れのない噂だ」と言える体制を作りましょう。