ベトナム旧市街の水害後に見た「笑っちゃうくらいのたくましさ」

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   ベトナムのホイアンの旧市街に滞在しています。ここは3、400年前の古い町並みが保存されている歴史的な地区で、ユネスコの世界遺産にも指定されている場所です。

   ここは自然が厳しいことでも有名で、昔から数年に一度くらい川が氾濫し洪水が起こります(前回は2011年)。ちょうど先週、私は、洪水の現場に居合わせました。3日ほど土砂降りの雨が降り続き、地元のひとも「くるかもしれない」といった矢先、川が氾濫し、歴史地区の町並みは水没してしまいました。

水没した旧市街を一周する即席ボートツアーも出現

洪水がきても市場を再開
洪水がきても市場を再開 水没した旧市街を一周する即席ボートツアー!?
水没した旧市街を一周する即席ボートツアー!?

   いわゆる床上浸水というやつで、目測ですが深いところは1メートル50センチくらいはきています。1階部分はほぼ水没しています。

   町の中心部にある市場は水没してしまい、市街地が停電になります。どうなるのか・・・と思っていたのですが、私がそこでみた光景は、災害の悲惨さ・・・ではなく、笑っちゃうくらいのたくましさでした。

   まず、市場ですが、おばちゃんたちが野菜や肉をリヤカーにのせて、上岸に移動。路上で市場を再開させてしまいます。そして、ものが不足するかもしれないということでお客さんが一杯。足元にまた洪水が来ると、さらに移動するという。まさにノマド式市場です。

   そして、水没している地域には、どこからか船がやってきます。逃げ遅れた人の救助用なのかと思いきや、客引きをしているじゃないですか。なんと、水没した旧市街を一周するという即席ボートツアー。早速4人のヨーロッパ系の観光客が船に乗り込み出発していきました。

   なんという商売魂でしょう。災害までもイベントにしてしまうとは。

翌日、商店は開いており、バイクと自転車が行きかいして……

前日は「水没」したエリアも…
前日は「水没」したエリアも… 翌日午後には観光客がおしよせていた(写真上と同じ場所)
翌日午後には観光客がおしよせていた(写真上と同じ場所)

   そして、翌日。未明から水が引き始めました。どうなったのかと思って、昼頃に旧市街にいってみると、すべてが再開されているではないですか。商店は開いており、バイクと自転車が行きかいして、観光客がおしよせ、オープンカフェでビールを飲んでいるひともいます。このあたりは、昨日は水没していたんですが・・・。昔から繰り返された災害で、事前の用意ができてるとはいえ、あまりの何事もなかった様子に、びっくりというか、拍子抜けというか、たくましいというか。

   うまく感想は言えないのですが、この旧市街にすむベトナム人の身の軽さにはびっくりしました。

   なぜこの地域の水害が繰り返されて、治水などが行われないのかの事情は詳しくはわかりませんが、彼等は水害と共存というか、ちゃんと適応しているようです。

   もしこれが、治水などがそこそこ発達し、20年、30年、洪水がこなかったら、彼等はノウハウを忘れてしまうかもしれません。そして、30年ぶりの洪水がやってきたとき、知恵が失われていると、被害が大きくなるのかもしれない。100%は防ぎようのないものは、適度に毎年に被害がおきて、ノウハウが継承されるというのも大事なのでしょうか。

   取り留めない感想ですが、現在、自然災害が多発している現状で、災害と、人の営みについて考えるきっかけになった、今回の経験でした。もっとも、今回の大雨や洪水で、ベトナム全体では数十人以上の方が亡くなったと報じられています。ご冥福をお祈り致します。(大石哲之)

大石哲之(おおいし・てつゆき)
作家、コンサルタント。1975年東京生まれ、慶応大学卒業後、アクセンチュアを経てネットベンチャーの創業後、現職。株式会社ティンバーラインパートナーズ代表取締役、日本デジタルマネー協会理事、ほか複数の事業に関わる。作家として「コンサル一年目に学ぶこと」「ノマド化する時代」など、著書多数。ビジネス基礎分野のほか、グローバル化と個人の関係や、デジタルマネーと社会改革などの分野で論説を書いている。ベトナム在住。ブログ「大石哲之のノマド研究所」。ツイッター @tyk97
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