「真のブラック企業」より「ワタミ」「ユニクロ」が叩かれる理由

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本当の意味で働きやすい労働環境を実現するために

(3)採用時と就職後のミスマッチがある

   ワタミの渡邉氏は、財界や起業を目指す若者の間では「一代で外食・介護大手のワタミグループを築き上げた立志伝中の人物」であり、「発展途上国の子供たちへの教育支援活動を熱心に行う篤志家」と認識されている。日本経団連理事、教育再生会議委員、神奈川県教育委員会教育委員、そして参議院議員も歴任する大物でもあり、テレビ番組のコメンテーターとしても活躍していた。「業界大手企業だから…」「有名人の経営する会社だから…」という理由や、「地球上でもっとも多くのありがとうを集める」というミッションに共感して同社を選んだ人も多いだろう。

   また、ユニクロが今のような批判を受けるようになるまで、その労働環境や社風について知る人はあまり多くはなかったはずだ。むしろ同社は「積極的な世界進出を志し、革新的な商品を打ち出す新進気鋭のSPAチェーン」というイメージが強かった。

   渡邉氏や柳井氏の言葉に嘘はなく、確かに有言実行していた。しかし両社では、採用段階で「当社は厳しい」と明確に説明していなかったのではないか。「若手を厳しく鍛える」という方針がうまく伝わっておらず、入社前に抱いていた職場イメージと、実際の現場に大きな乖離があったから、ミスマッチを感じた社員が「ブラック」と騒いだことも一因として存在する。

   このように、ワタミやユニクロがブラック批判を集中的に受けた背景には、その商品や店舗、そして経営者の認知度が高く、誰にとっても批判しやすかったという事情がある。

   では、両社の職場環境が改善し、ブラック批判が収まれば問題は解決するのだろうか?決してそうではない。実際には、ワタミやユニクロに対する批判がバカらしくなるほど「ブラック度」の高い企業はたくさんある。ある意味、批判の矢面に立ってくれている両社の影に隠れた真のブラック企業を撲滅しない限り、本当の意味で働きやすい労働環境を実現することはできないのだ。(新田龍)

新田 龍(にった・りょう)
ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、ブラック企業ランキングワースト企業で事業企画、営業管理、人事採用を歴任。現在はコンサルティング会社を経営。大企業のブラックな実態を告発し、メディアで労働・就職問題を語る。その他、高校や大学でキャリア教育の教鞭を執り、企業や官公庁における講演、研修、人材育成を通して、地道に働くひとが報われる社会を創っているところ。「人生を無駄にしない会社の選び方」(日本実業出版社)など著書多数。ブログ「ドラゴンの抽斗」。ツイッター@nittaryo
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