知名度の高さが影響
とはいえ、「ユニクロ」「ワタミ」の両社が属するアパレル業界や飲食業界には、同社よりさらに劣悪な労働環境を従業員に強いる会社は多々存在している。労務管理に違法性がある会社はもちろんのこと、月に300時間以上の労働時間、厳しい社員教育、重いノルマ、体育会系の社風や古い企業体質など、ブラックな職場はごまんとある。中でも上場している両社はまだ「だいぶマシ」なほうと言ってもいいくらいだ。
ではなぜ、「ユニクロ」と「ワタミ」ばかりがブラック企業の象徴のように批判を集めているのだろうか。この理由は、次の3つの要素から分析できる。
(1)幅広い世代、地域で話題を共有できる
「ユニクロ」「ワタミ」の店舗は全国に存在する。それだけ認知度が高く、多くの人が店舗を訪れ、商品を手に取り、飲食した体験がある、という点が「共通言語」を生み、批判が拡散しやすくなるのがポイントだ。
逆に、一般的な知名度が低い中小零細企業や、BtoBビジネスの企業、事業展開が特定の地方や世代だけに限られている企業は「どこそれ?知らない」でハナシが終わってしまい、いくら違法性があったとしても話題にさえならない。知名度がなければ当然、ブラック批判の対象となることもない。
(2)経営者がよく知られている
ブラック批判されるとき、企業自体のみならず、その経営者も対象となることがある。しかし件の経営者の名前や顔、個性が分かりづらい企業の場合、批判の矛先は向きにくいものだ(余談だが、「しまむら」の現社長は島村さんではない)。
ユニクロの柳井氏やワタミの渡邉氏の場合、メディア出演の機会も多く、広範な消費者がその名前を聞き、顔を思い浮かべることができるほど知られた存在だ。それゆえに、経営者の知名度がない企業よりは批判されやすくなってしまう。
あとは会社が儲かっているとか、多額の個人資産を持っている、といった面も「なぜ社員に還元しないのか」などと感情的に批判する人を生んでしまっているだろう。
(ちなみに、渡邉氏は現在ワタミの社長ではなく、代表権も持っていない。肩書は「非常勤取締役会長」であるが、ワタミといえば渡邉氏のイメージだろう)