インフルエンザの予防接種を断る社員 業務命令違反で処分できるか?

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社会保険労務士 野崎大輔の視点
懲戒処分は権利の濫用となる可能性が高い

   今回のケースで懲戒処分を下すのは難しいでしょう。インフルエンザの予防接種を受ける法律上の義務が無いのにもかかわらず、受けなかったから罰するというのは権利の濫用となる可能性があるからです。

   懲戒処分とは別の論点で予防接種を強制できるかを確認しました。過去に争った判例が見当たらなかったため、数カ所の労働基準監督署に確認してみたところ、意見が分かれていました。強制できるという視点の監督署の話では、「業務命令でインフルエンザの予防接種を命じて何が悪いんですか?これは当たり前のことですよね。法的にも根拠がないことですし、会社が命令できないということでもありません」とのことでした。特に法律で定めがないということは、逆に言うと強制もできるということです。

   ただし、争いになった場合は会社としてインフルエンザの予防接種を義務付けるにあたっての根拠を明示する必要がありますので、この辺りは押さえておく必要があるかと思います。整理をすると、業務上の必要性があれば、インフルエンザの予防接種を業務命令として指示しても良いと私は考えます。ただし、アレルギーのある人には配慮をする必要がありますし、受けなかったからといって懲戒処分を下すのはやめた方が良いと思います。

インフルエンザ予防接種拒否で処分された。納得できますか?
仕方ない
納得できない
労基署に相談する
処分内容による
その他
尾崎 健一(おざき・けんいち)
臨床心理士、シニア産業カウンセラー。コンピュータ会社勤務後、早稲田大学大学院で臨床心理学を学ぶ。クリニックの心理相談室、外資系企業の人事部、EAP(従業員支援プログラム)会社勤務を経て2007年に独立。株式会社ライフワーク・ストレスアカデミーを設立し、メンタルヘルスの仕組みづくりや人事労務問題のコンサルティングを行っている。単著に『職場でうつの人と上手に接するヒント』(TAC出版)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。

野崎 大輔(のざき・だいすけ)

特定社会保険労務士、Hunt&Company社会保険労務士事務所代表。フリーター、上場企業の人事部勤務などを経て、2008年8月独立。企業の人事部を対象に「自分の頭で考え、モチベーションを高め、行動する」自律型人材の育成を支援し、社員が自発的に行動する組織作りに注力している。一方で労使トラブルの解決も行っている。単著に『できコツ 凡人ができるヤツと思い込まれる50の行動戦略』(講談社)、共著に『黒い社労士と白い心理士が教える 問題社員50の対処術』がある。
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