社会保険労務士 野崎大輔の視点
懲戒処分は権利の濫用となる可能性が高い
今回のケースで懲戒処分を下すのは難しいでしょう。インフルエンザの予防接種を受ける法律上の義務が無いのにもかかわらず、受けなかったから罰するというのは権利の濫用となる可能性があるからです。
懲戒処分とは別の論点で予防接種を強制できるかを確認しました。過去に争った判例が見当たらなかったため、数カ所の労働基準監督署に確認してみたところ、意見が分かれていました。強制できるという視点の監督署の話では、「業務命令でインフルエンザの予防接種を命じて何が悪いんですか?これは当たり前のことですよね。法的にも根拠がないことですし、会社が命令できないということでもありません」とのことでした。特に法律で定めがないということは、逆に言うと強制もできるということです。
ただし、争いになった場合は会社としてインフルエンザの予防接種を義務付けるにあたっての根拠を明示する必要がありますので、この辺りは押さえておく必要があるかと思います。整理をすると、業務上の必要性があれば、インフルエンザの予防接種を業務命令として指示しても良いと私は考えます。ただし、アレルギーのある人には配慮をする必要がありますし、受けなかったからといって懲戒処分を下すのはやめた方が良いと思います。