日本経済新聞社が実施した「人を活(い)かす会社」調査で、富士フイルムホールディングスが総合1位に輝いた。
同社は、東洋経済新報社の「CSR企業ランキング」でも2012年にトップに立ち、2013年も2位となっている。高く評価された社内制度を点検した。
出産や育児での退職者「見たことない」
日経新聞2013年11月4日付の記事によると、富士フイルムは「育児・介護」と「雇用・キャリア」の分野で首位だった。
具体的にどんな制度があるのか。同社ウェブサイトによると、育児休暇制度は「法律で義務化される以前」に導入していたという。育休を含めて、子どもが小学校3年生になるまでの間はさまざまな支援メニューを用意している。
例えば産前・出産・産後から1歳までは、「ストック休暇」の利用が可能だ。これは、有給休暇の失効分を60日まで積み立てることができる仕組みで、育児以外では介護やボランティア休暇としても認められる。その後は短時間勤務制度や看護休暇制度などが設けられている。育休は、子どもが3歳になるまでの最長2年間取得することが可能だ。さらに出産祝い金として、1人目は5万円、2人目は10万円、3人目以降は100万円を支給する制度も整えたと日経は伝えている。介護の場合も、最長で2年の休暇取得が許される。
この点、就活情報サイト「キャリコネ」で、富士フイルムの評判を探ってみると好意的な意見が多い。「出産・育児・介護などが発生した際に、今までと同じように働くことができると思いますか」との問いに、社員と思われる投稿者から「出産や育児で退社をする方は見たことがないくらい、みなさん休暇制度を利用して職場復帰されていました」との回答が書かれている。
日本を代表するCSR先進企業
「CSR企業ランキング・トップ700社」で、富士フイルムは2007年の第1回から常に上位にランクインしており、2012年はトップに立った。特に評価されたのが「企業統治+社会性」の項目だ。法令順守や内部統制の整備、社会貢献活動への取り組みなど2つの項目合わせて48点の評価事項があり、100点満点で98.4点と極めて高い点数だった。
2013年は総合でトヨタ自動車に首位を譲ったものの、わずか0.1点差と僅差の2位。企業統治+社会性と財務の項目ではトヨタを上回った。
2年続けて高得点をマークしたのは、「ビジネスの利益よりコンプライアンス優先」という行動規範の存在だ。2011年の東日本大震災発生の際に、水や泥をかぶった写真やアルバムの救済支援活動を実施、また低価格のデジタルカメラを開発して発展途上国で販売するビジネスを立ち上げたことも評価された。2013年3月25日付の東洋経済オンラインでは「日本を代表するCSR先進企業」との「お墨付き」を得ていた。
一方で課題は、女性管理職の少なさだ。2012年にはここが指摘され、2013年も「人材活用」の項目は他と比べて若干見劣りする。
日経新聞「人を活かす会社」調査では、回答企業の女性の部課長職の人数は2013年3月までの1年間で前年比1割増、なかには3.5倍に増やした企業もあるとした。安倍晋三首相は、成長戦略の一環として女性役員と管理職の増加を掲げており、「役員に1人は女性を登用していただきたい」と要望している。仕事と育児、介護の両立の面では積極的な支援をしている富士フイルムとしては、今後はこの点の強化が求められるだろう。