「全幅の信頼」は禁物
Aを擁護するつもりはさらさらないが、「大切な職員を放置して横領をさせてしまった」組織の責任も厳しく追及すべきだ。歴代の上司たちに対しても、在任期間、職責等に応じた処分を下さなければならない。「任せたよ。ちゃんとやってね」と言うだけなら誰でもできる。「ちゃんとやっているか」を厳しく見極めるのが管理職の最低限の仕事であり、「全幅の信頼」は禁物である。
再発防止に向けては市長以下の幹部の危機感と本気度が厳しく問われる。市の報告書には、すでに以下のような対策を講じたと書いてあるが、その徹底は簡単ではない。
・経理事務、電算システム、現業員(ケースワーカー)の職務を分離
・金庫管理の適正化(定期的な点検)
・追加支給の定例化(月3回)
・資金前渡による随時払いの適正化(縮減)
まず、職務の分離は、従来徹底すべきと分かっていながらできていなかったのだから、今さら対策リストに載せるだけでは何も変わらない。例えば、安易に兼務させてしまう現状を具体的にどう改善するのか。
外資系の金融機関には、産休や長期休暇取得者の業務をカバーする専担者を置いているところもあるという。その目的は単なるカバーではなく、休暇取得者の業務内容の点検(不正の有無のチェックを含む)にある。そこまでやれとは言わないが、もはや従来のやり方の延長線上では不十分だろう。
「適正化」や「定期的」などの言葉にも要注意である。何をもって適正とするのか、定期的とはどのくらいの間隔なのかが具体的に職員に伝われなければ、対策は絵に描いた餅になってしまう。これらを空疎な「お役所言葉」に終わらせてはならない。(甘粕潔)