素人奥様社長の「魔法の一言」 「前社長時より会社に活気」のヒミツとは

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目にとまった「一隅を照らす」

   それに加えてB社長が始めたのが、社員間や来客へのまごころ挨拶の励行。はじめは気乗りがしなかったシャイな職人肌の社員たちも、社長の感謝の一言による皆のモチベーションアップ効果から「おはよう」「こんにちは」「いってらっしゃい」「いらっしゃいませ」が自然に出るようになり、社内の雰囲気はすっかり変ったのだそうです。

   私とB社長との直接面談は残念ながらいまだ実現していないのですが、この話にあまりに興味が尽きないので面識のあるA社長から事の真意をたずねてもらい、次のようなお話をいただきました。

   ご主人を亡くし突然社長の重責を担わざるを得なくなった時に、たまたま読んでいた本の一節に出ていた平安の高僧最澄の言葉が目にとまったそうです。「一隅を照らす」。これは自分に与えられた立場でできることに全力を尽くせば、全体が明るく照らされることになり、何事もよい方向に向かうという意味です。

「この言葉を目にした時に、専門的な知識もなくまともな仕事など何もできない私にできることは、会社を支えてくれている社員の皆さんやお取引様への感謝の気持ちを言葉にしたり明るく気持ちのいい挨拶をしたりという、正に「一隅を照らす」ことなのだなと思ったのです。背伸びをしても仕方ない、まずは自然体でできることをやっただけのお話です」

   経営者は経営者であると言う責任感や自負をもって組織をひっぱることは必要ですが、油断をしていると行き過ぎたプライドや慢心がついつい自身に背伸びをさせて、思わぬ失敗に陥ることもあるのです。背伸びをせずに今自分のやれることはなにかを確かめつつ、「一隅を照らす」ことからはじめた素人社長の一言からは、ベテラン社長にも学ぶべきものがあるように思います。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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