厚生労働省によると、大学卒業後3年以内に離職した人の割合が31%に達したという。今から3年前、2010年3月の大卒組は決して就活が楽ではなかったはずだが、「志望通りの就職ができなかった人が比較的多かった」のが原因とみられている。
なかでも離職率が高かった業種は、「宿泊・飲食サービス業」だ。その割合は51%と、実にふたりにひとりが辞めている計算となった。
ブラック業界の代名詞的存在
厚労省が2013年10月29日に発表した「新規学卒就職者の在職期間別離職率」を見ると、3年以内の離職率が30%台に乗るのは2年ぶり。「バブル崩壊」後の1995年3月卒以降、離職率が3割を上回るようになり、2004年3月の卒業生は過去最高の36.6%にまで達した。
産業別にみると、宿泊・飲食サービスは統計に残っている2003年3月卒以降、離職率が常にワースト1位か2位で、5割越えも珍しいことではない。
厚労省では、離職率が極端に高い企業では「若者の使い捨て」が疑われるとして立ち入り調査を行っている。会見で岡崎淳一・職業安定局長は「サービス業における雇用管理や仕事のあり方が影響していると思う」と指摘した。
インターネット上ではしばしば、飲食業イコールきつい仕事、として語られる。質問投稿サイトには「拘束14時間、基本給はおそらく最低限、プライベートでは料理できないほど疲れ切り」と明かしたうえで「飲食業はどこもこうなのか」と書き込まれていた。投稿当時就活中だった人は、アルバイト先が飲食店だったが「誰もが早朝から遅くまで働きづめ」「社員がいい加減で賞味期限切れのものを出している」という現場を見て「飲食業には就きたくない」と吐露していた。真偽のほどは定かでないが、評判が芳しくないのは間違いない。
所定労働時間の条件定めた就業規則作成の動きも
ブラック企業アナリストの新田龍氏は、会社ウォッチ2013年10月13日付の記事で「飲食業は、私が就活生だった15年前からずっとブラック業界の代名詞的存在であり続けている」と指摘した。競争が激しい業態という現実が低賃金、長時間労働につながっている、というわけだ。一方で、積極的に改善に動き出している企業も少なくないとしている。
8月9日付の産経新聞では、飲食業界で働きやすい環境整備に向けた取り組みが広がっていると紹介した。飲食業界専門の人材紹介サービス「クックビズ」が7月に開催したセミナーでは、飲食店経営の企業の人事・労務担当者らに賃金や所定労働時間の条件を定めた就業規則の作成を勧めたという。「雇用契約や割り増し賃金(残業代)の規定が未整備な場合が多く、人材の定着率が低い一因となってきた」からだ。
地道な取り組みで、なにかと「ブラック扱い」されがちな状況から脱却できる日はくるだろうか。