営業の勝負を分ける一瞬 「立ち止まってもらう」テクとポイント

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「部長、3分だけお時間をいただけないでしょうか?」

と超短期決戦の営業機会。こうした機会にプレゼンすることを「エレベーターピッチ」と呼びます。ITの本拠地である米シリコンバレーが発祥。ここでは、次のGoogleを目指す多くの起業家たちが日に数十件の投資案件を目にするプロの投資家たちに自分のビジネスプランをアピールします。そんな中、「起業家はエレベーターの中で投資家に会ったら、自分のビジネスプランを30秒で的確に伝えられなければ未来はない」と言われてきました。これがエレベーター・ピッチ("ピッチ"は「説明する」の意味)なのです。

   こうした一回勝負で、かつ短時間で売り込む方法が重要になってきた昨今ですが、それを得意とする営業が増えています。それだけお客様が営業に対して時間を割いてくれないからかもしれません。

3分1本勝負の基本的な前提

勝負は一瞬
勝負は一瞬

   例えば、飛び込みと呼ばれる新規開拓をしている事務機器の営業。あるいは生命保険のセールスレディーの女性たち。さらには忙しい病院の先生と対峙しているMP(医薬情報担当)など。いずれにしても3分1本勝負が出来るために、もっと基本的な前提、

《立ち止まって話を聞く》

状態をつくらなければなりません。そんな立ち止まってもらう、新しい作戦が幾つも編み出されています。ある優秀なセールスレディーに聞いたところ、相手に立ち止まってもらうだけでなく、

「自分の話を聞きたいと思ってもらえるような状況を作ることが大事」

とのこと。「今、ちょっといいですか?」と声をかけても、「忙しいから、また今度にして」と立ち去られたり、あるいは話を聞いてくれてはいるけれども、心ここにあらずの状態だったりでは意味がありません。相手が自分のために時間を割いて、きちんと話を聞いてもらえる状況に持っていかなければなりません。さらに、

「短時間で伝えたい用件を一気に伝え、相手に理解させなくてはならない」

   このスキルを養うには、普段からの練習が不可欠です。叩き込むようなセールストークを用意しておかなければなりません。整理すると

・立ち止まっていただく「きっかけ」づくり
・思わず聞きたくなる「場」づくり

   この2つに関してどうしたらいいか。営業で差がつくポイントではないでしょうか?では、ここから、そのポイントで効果的な方法について紹介していきましょう。

相手が「得する」予見を示すこと

   大きくポイントは1つ。相手が「得する」予見を示すこと。

   先の保険のトップセールスレディーは、会社の受付で出待ちをして、ターゲットとする社員が出てきたら、缶やペットボトルのお茶を渡すそうです。すると、その社員は「何だろう」と思って立ち止まってしまう。たとえ150円のお茶でも、もらってしまうと、「悪いなあ」という気持ちになり、時間を割いてくれる。ちょっと子供だましのような作戦ですが、うまく行くことが多いそうです。

   なぜ、このやり方で相手を立ち止まらせ、自分の話を聞くために時間を割こうと思わせることができるのでしょうか。ヒントはセールスレディーが渡す「お茶」にあります。

   お茶を渡すと、なぜ相手は立ち止まるのか。それは、何だかんだ言っても、お茶をもらうと150円得するからだと私は思います。だから相手は、話にさほど興味を感じなくても、「ちょっとだけなら聞こうかな」と考えてしまうわけです。昔のセールスレディーの方法で言えば、「飴」に当たります。たかが飴ですが、だからこそ効果的なのです。もし、一万円札だったら、さすがに相手は「受け取れません」と言うでしょう。高額の物品でも同じです。しかし、飴やお茶だったらすんなり受け取ってしまう。賄賂でもないし、受け取っても気持ちの負担は少ない。つまり、ちょっと得してうれしい気持ちになる。だから、「立ち話ぐらいはいいかな」と思うのです。高いものを贈るより安いものを贈る方が効果的、というのは奇妙に思えるかもしれませんが、現実的に効果のある作戦として覚えておく価値があります。

   お茶がダメなら褒め言葉でしょう。誰でも褒められればうれしくなります。一般的に、女性は褒め上手が多いものです。日頃から互いに褒め合う習慣があるせいかもしれません。

   でも、男性は褒められる機会が非常に少ない。上司に怒られたり、お客様に叱られたりする機会は結構多いのに、誰かに褒められることはあまりありません。これは仕事でもプライベートでも同じでしょう。だから、褒め言葉のプレゼントは特に男性に効きます。褒め言葉を投げかけると、うれしくて耳を傾けてくれる可能性が高くなります。

上手な褒め方、タブーの褒め方

   相手を褒めるポイントは、大きく2つ。一つは、相手を観察したときに、その人のこだわりを感じるもの。たとえば「ステキなネクタイですね」「格好良い時計ですね」など、男女問わず、小物を褒められると人は喜ぶものです。なぜなら普通、小物というのは自分のセンスで選んで身につけているものだからです。中には人からの贈り物の場合もあるでしょうが、それでもまったく気に入らないものは身につけていないはずです。

   一方、身体的特徴を褒めるのは、いくらポジティブな言い方であってもお勧めできません。「背が高くていいですね」と褒めたつもりが、相手はひょっとしたら背が高いことに悩んでいるかもしれません。「目が大きくて、彫りが深く、格好いいですね」と褒めたつもりでも、相手は"濃すぎる"顔を誰かにからかわれた経験があるかもしれません。

   身体的特徴は、その人が持って生まれたものであり、自分では変えられないので、人に指摘されると、よく言われた場合でも傷つくことがあります。触れない方が無難でしょう。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
「高城幸司の社長ブログ」
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