入社時の賃金に差をつければ真面目に勉強する
企業は企業で、自分たちで何らかの学科試験的なプロセスを作って代用するだろうから、そういう意味では入試を4年間後にずらすだけとも言える。
とはいえ、ここが組織というものの悲しいところで、教育再生会議からすれば「労働市場の流動化や企業内改革が先である」なんてことは分からないだろうし、分かっても立場上言えないだろう。
でも政府からは早く仕事しろ提言出せとせっつかれる中、はるか先の多様化というゴールに向かって「学科試験廃止」という超ロングパスを放り込まねばならなかったのだろう。
まずは企業が横並びの一括採用を見直し、入社時の賃金や序列に差をつける。キャリアパスを明確にし、外国人や留学生が定着する組織風土にする。そして、トップにせめて「いやー勉強しなかったから大変でしたよ」と謙遜するくらいのリテラシーを仕込む。
そういう地道な作業の結果、大学は内側から変わっていくだろう。入試の議論は、やるとしてもそれからでいいのではないか。大学は社会の鏡なのだから、鏡に向かって「おまえが変われ」と迫ったところで問題は解決しないのだ。
※全体の見直しではなく、大学側が自主的に推薦枠を作る程度の話なら筆者はむしろ賛成だ。大学、企業の双方にとっていい刺激になるだろう。バカが増えると心配する暇があったら、バカでも卒業できてしまうザル試験を何とかしろと言いたい。(城繁幸)