首都圏の朝の通勤時間帯を襲った大型の台風26号。鉄道や地下鉄は次々にストップし、駅は通勤客であふれかえって大混雑状態が午前中いっぱい続いた。
台風で交通網が大混乱すると分かっていながら、それでも会社を目指さざるを得ない悲しさ。インターネット上には嘆きの声が書き込まれ、なかには上司から「会社に泊まっていけ」と指示され怒りをあらわにする人もいた。
床一面にダンボール敷き詰めたオフィス
10年に1度の規模と言われた巨大台風に、首都圏の鉄道・地下鉄はひとたまりもなかった。2013年10月16日朝、テレビやネットで続々と伝えられる「運転見合わせ」に、頭を抱えた会社員は少なくないだろう。
それでも「遅刻してなるものか」と前夜から準備を怠らなかった人もいた。都内のカプセルホテルは、10月15日の夜早い段階で次々に満室となった。普段なら終電を逃して帰れなくなったサラリーマンの宿泊手段という印象だが、この日は電車の時間に関係なく、早々に床につく姿が見られた。「部下に「『明日は平常どおり出勤』と指示した手前、自分が遅れて出社するわけにはいかないので」とテレビの取材に答える男性もいた。
だが、そこまでして定刻どおり出社しなければならないのかと疑問に思う向きはあるだろう。気象庁は前夜「危険なので不要な外出は控えて欲しい」と会見で訴え、テレビの天気予報でも注意を呼びかけていた。仕事が「不要な外出」ではないにしろ、交通が混乱するのは目に見えており、台風の規模の大きさから危険度は通常のケースよりも高い。明確な判断が会社側から出ていないと、結局は必死の思いで勤務先にたどり着くよう動くしかない。
ツイッターには、「怒り」の投稿があった。台風で交通機関が乱れる恐れがあると報じられているからこそ「明日、遅刻したら始末書だ」と上司が予告したというのだ。「分かってるなら早く家を出ろ」ということかと思いきや、それを上回っていた。「できれば会社に泊まれ」と指示したというのだ。投稿者は1枚の写真をアップ。そこには、事務所と思われるスペースの床にダンボールが一面に敷き詰められた風景が写されていた。
「この会社潰したい(怒)」
と憤慨していたが、その後ツイートは削除された。
「這ってでも行くべし」に「押しつけ」と非難
台風が来ても社員に「むちゃぶり」して定刻出社を求める企業、たとえ駅の入場制限で何時間も待たされ、すし詰めの電車に乗ってでもオフィスにたどり着こうとする「社畜」――。ネット掲示板には、両者を揶揄する書きこみが見られる。
「Yahoo!知恵袋」で2009年に掲載された投稿が、「社畜のベストアンサー」としてやり玉にあがった。新入社員からの「台風を理由に会社を休めるか」との問いに、「必死になって行こうとした姿勢が大事」「電車が遅れそうな場合は、いつもより早め(極端な場合始発でも)に行っているくらいの気構えを持っていた方が良い」「這ってでも行くべし」との回答だ。ネットでは、「こういうのを礼儀とか義務とかいって押しつけてんのがやばい」「頭おかしい」と非難していた。
一方で質問投稿サイト「教えて! goo」には、2009年10月8日に「台風で会社に行かなかったことを原因に解雇通告されました」との投稿があった。試用期間の時期、台風の影響で電車がストップし、他の交通手段もなく身動きが取れなかった。朝の時点で一度連絡、さらに電車が復旧の見通しが立たないことが分かり再度電話して「休みます」と伝えたという。
すると夕方、上司が怒りの電話をよこした。「他の人は遅れてもみんな来ている。あなたも来るべきだった」とし、突然解雇通告されたというのだ。
これには複数の回答が寄せられ、日本の会社員全般の考え方を踏まえて「出勤手段の見通しがつかなかった段階においても、『出勤ありき』で考えるべきだ」との指摘があった。上司の判断を仰ぐべきだったというわけだ。ほかには「台風接近で、明日会社に来られないかも・・となった人が私の周りにも何人もいました。『明日、交通機関がどうなるかわからないので、泊まります』と、泊まってました」という投稿者もいた。
もっとも「超悪天候、下手したら命に関わる天候の時に出勤するべき、そんなの常識。となる常識について、私はどうかと思います」との意見もある。判断が難しいところだが、いずれにしろ「自分勝手な判断」は好まれないようだ。