社長のコミュニケーション不足は、組織の「万病の素」
片や酒の席で若手にもっと話をして欲しいA社社長、一方の「酒の席で社員は余計なことを話すな」と怒るB社社長。一見正反対に見える二人の社長のお酒に席を巡るお悩みに対する私の処方箋は、全く同じものでした。それは「社長自身が日常的な社員一人ひとりとのコミュニケーションを、もっともっと増やしましょう」というものです。
A社社長に関して言うなら、若手社員との日常的なコミュニケーションが不足しているから、彼らから「よく分からないオジサン」と思われ、一緒に飲みに行ことも腹を割って話をすることも敬遠されているわけです。小さな組織ですから、社長と社員がもっと日常的に近しい関係になれるなら、例え世代間のギャップはあろうとも、たまには一杯飲んで社長ともいろいろ話をしてみようかという気にもなるのではないかと思われました。
B社社長の「独断」はコミュニケーション不足の象徴そのものです。社員とのコミュニケーションが絶対的に不足し、社長の様々な決定が彼らから見て「独断」と映るから不平不満が募る。事前のコミュニケーションによって、社長の考え方を何かの決定前に説明したり伝えたりあるいは社員の意見を聞いたりするなら、「独断」イメージは大きく解消され社員同士の酒の席での不満爆発はかなりの確率で避けられるはずなのです。
この二人の社長のケースはさほど深刻なものではありませんでしたが、中小企業における社長のコミュニケーション不足と言うのは非常に起きやすい現象であり、誤解、行き違い、すれ違い、思い違い等々さまざまな弊害を生み、そのことが時として大きな問題にも発展します。言ってみれば社長のコミュニケーション不足は、風邪と同じく組織にとっては"万病の素"でもあるのです。
経営者は常にコミュニケーションの大原則「コミュニケーションは量が質をつくる」を念頭において、社員一人ひとりとの日常的コミュニケーションの量の確保に務めて欲しいと思うところです。(大関暁夫)