日本国外にいて、非常に便利だなと思う仕組みが、プリペイド携帯です。
海外から来た人でも、非常に簡単で安く通信環境を手に入れられます。この制度のメリット・デメリットを考えていたら、日本の雇用制度と似ているなと気付きました。
私は今、取材のためにフィリピン・セブから、カンボジア・プノンペンに来ています。
このカンボジアでは、携帯電話の料金は非常に安く、1か月1GBの通信料金がたったの3ドル(300円)です。日本の携帯を持っていって、国際ローミングし放題を使うと、1日2000円以上するので、この安さは特筆すべきものがあります。
フィリピンでも1か月1GBで1100円程度
この価格はカンボジア特有のものではなく、フィリピンでも1か月1GBで1100円程度。欧米先進国を含む多くの国で2000円以下で充分な通信を行う事ができ、日本の高い通信料はどうなっているのだと疑問に思ってしまいます。
手続きも非常に簡単で、空港に携帯会社のカウンターがあり、そこに自分の携帯電話を持っていって「このプランで」と伝えれば、5分くらいで設定してくれます。カンボジアの場合は、1ドルのSIMカードに4ドル分チャージ、合計5ドル(500円程度)払えば充分です。国によってはパスポートが必要な場合もありますが、面倒な申込書などを書く必要はありません。
日本にも、このようなプリペイドサービスはありますが、購入できる店が限られていたり、手続きが面倒だったりで、もうちょっと頑張って欲しいところです。ちなみに、ロンドンのヒースロー空港や、フィリピンのマニラ・ニノイ・アキノ空港にはSIMカードの自動販売機もあります。
ただ、一つだけデメリットがあります。最初にSIMフリーの携帯電話の端末を買わなくてはならず、機種によってはそれが高額です。私は、iPhone4Sをバンコクで購入しました。日本で買ったiPhoneはそのキャリアでしか使えないようになっているため、世界中どこでも使えるものをバンコクで購入したわけです。そのお値段、約7万円。初期費用実質無料もある日本のiPhoneが夢のようです。まあ、この端末代が月々の通信料に上乗せされているので払う総額は変わらないのですが。2年以内に解約すると高額の違約金を払わなきゃいけないのもこういう理由です。
これって、日本の新卒就職の制度にちょっと似てるなと思いませんか?
2013年現在、欧米先進国では、大学をでた新卒の学生が就職をするためにインターンなどを経て就業経験を積むことが当然となっています。会社に入る前に、大学の学問以外に、インターンという経験を積まないと就職できない。入社にそれだけのコストがかかります。その代わりといってはなんですが、転職を繰り返してキャリアアップをするのが一般的です。
一発で自分に合ったものを見つけられた人はいいが…
日本の場合、まだまだ大学を出て「シューカツ」をして会社に入るのが一般的です。求められるのはエントリーシートやSPI、面接などのみで、就業経験を求められる事は稀です。入社に関するコストは、欧米に比べると非常に低いです。その代わり、転職歴がマイナス評価になる会社もまだまだ多く、転職に関するコストは高いです。
携帯電話の場合、簡単にキャリアを乗り換えることができると、「通話状況が悪い」「意外と繋がらなかった」「サービスが改悪された」なんてことがあった場合に、速攻で乗り換えて満足がいくものを選ぶ事ができます。それに対し、日本の場合は、一度契約してしまうとイヤでも使い続けないと高い違約金が発生してしまう。一発で自分に合ったものを見つけられた人はいいのですが、そうでない人に取っては長期間ストレスに苛まれ続けるという制度になっているわけです。
もちろん、日本以外の国にも、長期契約を結べば初期費用が安くなる、その代わり解約するときにペナルティが発生するという契約もあります。大切なのは、個人がプリペイドと長期契約を選べることです。みんなが自分に合った契約形態を選べると、多くの人が幸せになれるのです。
携帯の契約形態も、企業の雇用形態も、多くの人が求めれば少しずつ変わっていくはずです。日本でも様々な形態が選べる時代がはやく来ないかなあと思いながら、5ドルで買ったSIM入りのiPhoneでテザリングしたPCでこの原稿を書いています。(森山たつを)