甘い言葉で「使い捨て要員」を誘い込まない 飲食業界にも優良企業はある

富士フイルムが開発した糖の吸収を抑えるサプリが500円+税で

   前回に続き、「総ブラック」と言われる飲食業界における取り組みを紹介する。

   口先では「社員のために働きやすい環境を整えています」とは言えるが、実現すること、維持し続けることは難しい。これら各社の取り組みは、社員を大切にしようという気持ちが形になって現れており、大いに賞賛に値するものだ。

100個もの職務基準をオープンにする「ねぎし」

違いは味だけじゃない
違いは味だけじゃない

   パート・アルバイトへの手厚い待遇といえば、前回の「天狗」とともに、立ち食いそばの「富士そば」を展開するダイタンフードも忘れてはいけない。アルバイトへのボーナスは年2回。6月と12月に在籍していれば、入社すぐでもボーナス支給対象になる。

   有給休暇の支給や退職金もあり、定年退職後の再雇用、個人負担ナシの健康診断、週5日勤務の人には社会保険加入…。これらはすべて「アルバイトも対象」である。ブラック企業なら、正社員でも得られない水準だ。

   牛たんとろろ麦めし店「ねぎし」のねぎしフードサービスも、創業当時に人材管理や教育が行き届かずに失敗した経験を踏まえ、「働く人の満足を第一」に事業運営している。特筆すべきは「社員とアルバイトの区別がない人事評価制度」だ。

   違いがあるのは雇用形態だけ。店長になるまでの職務基準はまったく同じで、その要件を100項目にまとめた「100ステッププログラム」をもとに、対人関係能力や問題解決能力を社員のサポートのもとでブラッシュアップしていける仕組みになっている。

   それぞれのスキルを修得するごとに、昇給昇格できるようになっており、職位はスタッフボードに掲示され、全員の進捗状況も一目瞭然。「どこまで頑張れば昇給できるか」が開示されているため、むやみに時給を上げろと言ってくるスタッフもいない。

   某有名テーマパーク同様、働きがいいと顧客から名前が挙がったスタッフは表彰され、なかなか名前が挙がらないメンバーには同僚がアドバイスし続けるなど、店舗内のチームワークが高まる仕組みもある。こんな取り組みが評価され、2011年度「日本経営品質賞」中小規模部門を受賞している。

新田 龍(にった・りょう)
ブラック企業アナリスト。早稲田大学卒業後、ブラック企業ランキングワースト企業で事業企画、営業管理、人事採用を歴任。現在はコンサルティング会社を経営。大企業のブラックな実態を告発し、メディアで労働・就職問題を語る。その他、高校や大学でキャリア教育の教鞭を執り、企業や官公庁における講演、研修、人材育成を通して、地道に働くひとが報われる社会を創っているところ。「人生を無駄にしない会社の選び方」(日本実業出版社)など著書多数。ブログ「ドラゴンの抽斗」。ツイッター@nittaryo
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