パワーハラスメント(パワハラ)が収まる気配がない。職場でのいじめ・嫌がらせの相談件数は年々増加し、今では5万件を超える。
大声でなじられる、大勢の前で罵倒される、自分だけ無視――。精神面での苦痛に耐えられないとの悲鳴が絶えない。厚生労働省はパワハラ対策のハンドブックを作成したが、効果はどれほど期待できるだろうか。
パワハラ経験者は4人に1人、10年前の8倍に
朝日新聞デジタル2013年10月4日の記事は、男性会社員の悲惨な経験を紹介した。販売ノルマをこなさないと「人間扱い」されないと嘆く営業マン。電話で顧客とのアポイントがとれず、マネジャーから夜中の1時まで説教され「なんでアポ入らねーんだ。死にてーのか!」と罵声を浴びせつけられる。
都道府県労働局などに設置した総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は、2002年度の6627件から2012年度は5万1670件と約8倍に増えた。相談内容全体の中でも20.3%を占め、トップだ。
職場でのひどいいじめや嫌がらせ、暴行によりうつ病などの精神疾患を発病し、労災認定を受けるケースも増えている。2012年度は55件に上り、精神障害の労災補償の支給決定件数全体の1割強を占めた。
件数も、3年前と比べて3倍以上だ。加えて、厚労省のアンケート調査で、過去3年間にパワハラを受けたことがあると答えた人は25.3%と、4人に1人が経験していることが分かった。精神的な苦痛を受けている人は男女を問わない。
NPO法人の労働相談センターが9月27日、同センターに7月に寄せられた職場のいじめ、嫌がらせ、パワハラのメール相談の内容を公開した。どの事例も目を覆いたくなる。
女性事務員は、上司の罵声が原因で適応障害になり、出社できなくなった。するとその上司は「パートから正社員になったばかりなのに、そんなに休むならパートに戻って構わない」と脅しとも取れる発言をしたという。
勤続6年のIT企業正社員は、社長が「他のスタッフのいる前で小馬鹿にしたりイヤミの罵倒や非難を2時間以上」続け、果ては「すでに受け取った過去の給与や手当を遡って減額」するそうだ。