「中期的展望」と「人の力を借りること」の重要性
ちょうど居合わせた社長は私の事を覚えていてくれて、話が事のほか弾みました。やはり銀行に人の派遣をお願いしたのは社長でした。
「中期戦略を一緒に練ってくれる人が欲しいと思いましてね」
聞けば社長に就任して、若い頃から先代にいろいろな教育的な話を聞かされていたので、企業トップの「責任」という重圧に押しつぶされそうになったとか。
「親父が思いつめた理由は今さら知る由もありませんが、あらゆることを自分一人で指示して取り組んできたものの、モグラ叩きになりがちだったのは間違いないなと。自分がその立場になってみて、よく分かりました」
1年間社長のイスに座った結果、先代の失敗を踏まえ、経営の中期的な道筋を練る重要性に気がつきました。そして、自分ひとりで悩まずに人の力を借りるために、銀行から人を迎えるという結論に至ったようです。
自殺にまで至るケースは多くないとしても、経営者には人知れぬ悩みはつきものです。若社長が気づいた「中期的展望」と「人の力を借りること」があれば、世の中小企業経営者の悩みのある部分は、かなりの確率で解消するのではないかと思いました。(大関暁夫)