「パフォーマンス低下」の責任を誰が取るのか
筒井氏は、自殺した中原医師の遺書の中に「わが病院でも女性医師の結婚・出産の際には、他の医師に過重な負担がかかっているのが現状です」との記述があったと説明したうえで、こう主張している。
「『女性がいつ妊娠・出産するかは本人の自由』ではあるが、同時に『出産・育児によるスキルやパフォーマンスの低下は、あくまで本人が責任を負うべき事柄』とも私は考える」
出産・育児中の女性の働き方については、作家の曽野綾子さんが週刊誌上で「出産したらお辞めなさい」と題した持論を展開し、大論争になったのが記憶に新しい。
「赤ちゃんが発熱したのを理由に、母親社員が早退するのを毎度快く送り出せる会社ばかりではない」
とする一方で、育児が終わった女性のために再就職先の確保を拡充すべきとの意見だった。
ふたりの主張は別の次元の内容だが、産休や育児休暇、時短制度を利用する人が出てきたら、それを現場が埋め合わせしなければならないという事実の指摘は共通している。行き過ぎれば、特定の人に過重な負担がのしかかり、その結果過労死に至っては悲劇の極みだ。
全日本トラック協会が発行する「健康障害・過労死等を防ごう」の中にも「過労死等を起こしやすいタイプ」として、「我慢強さを必要以上に大切にしたり、ものごとを悲観的に考えたり、犠牲精神に富んだ性格」を挙げている。職場内での「お互い様」は大切だが、現場での支え合いだけで乗り切ろうとするのは禁物だ。