グループウェア大手のサイボウズは今年6月、従業員に対してそれまで禁止していた副業を解禁することを公表した。企業の人事労務担当者を対象にした「HR EXPO 2013」で、山田理副社長が講演で明らかにしたものだ。
講演では「個人で簡単にビジネスしやすい状況なのに、気にしているほうがナンセンス」と、副業禁止が時代にマッチしていないことを指摘したという。
給与カットやリストラで「ルール破り」が当たり前に
「東京五輪」やアベノミクスの影響で、景気の先行きに期待が持てる雰囲気になってきた。しかし大方のサラリーマンには、リストラの脅威が先送りされたものの、給料がこれまでより上がる見込みは持てない。
前述の山田副社長も、副業が高じて「自立できるならいいじゃないですか」と語ったという。絶対の忠誠を誓う代わりに、会社に人生を丸抱えしてもらえる時代は終わりを迎えたようだ。
「週末起業フォーラム」のウェブサイトを見ると、会員2000人のうち会社勤めをしながら副業を始めている人が半分おり、1割が月商50万円を超えているという。
代表的な副業は「ウェブ制作の代行」「通信教材などの配送代行」「DVDの撮影代行」などの代行業で、「お墓参り代行」というものもある。飲食店のオーナーや、企業やビジネスパーソンを対象とした「コンサルタント」も多い。
東芝や富士通、日産自動車などの大手企業は、リーマンショック後の賃金目減りを補うため、工場勤務の従業員を中心にアルバイトを容認して大きく報じられた。それでもホワイトカラーについては「本業への影響」を盾に、副業を許さないところが多かった。
ところが、会社が給与カットやリストラを平気で行うようになってからは、「会社のルールなど知ったことか」とばかりに副業をする人が続出。かつては夜の交通整理など睡眠時間を削り体力を要する仕事が多かったが、パソコンさえあれば自宅でできるものが増えたのも追い風となった。
「副業に手を出す会社員」を騙すビジネスも好調か
根強い人気なのは、サイトのクリック数や物品販売などの成果に応じて収入が得られる「アフィリエイト」だ。ネット上には「ブログとメルマガアフィリエイトで月収100万!」「アフィリエイトで月に500万円以上稼ぐ!」といった言葉が踊っている。
実名を隠し、確定申告を巧みに行えば会社にはバレない。とはいえまとまった収入を得るためには、かなり多くの訪問者を集める必要がある。訪問者を増やすためのコンテンツを用意するのも容易ではないが、そのあたりを見透かして罠をかける業者もいるようだ。
消費者庁は先月、ウソの売り文句でネット副業を勧誘する業者がいるとして、事業者名を公表して注意を呼びかけた。「ウェブサイトを開設し、副業をすれば収入が上がる」と持ちかけて開設費用30~40万円を振り込ませ、それ相当の収入が得られない場合は全額返金すると告げていたという。
しかし「返金されない」という相談が全国で65件にのぼり、処分に至った。開設費用相当の収入があがった事例は確認できなかったらしい。事情通は「事業者名の公表は単なる見せしめ。怪しい業者は数え切れない」と指摘する。
何年間も与えられた仕事だけをしていて、金儲けのセンスが磨かれていない会社員が安直に副業に手を出しても「士族の商法」で終わる可能性が高そうだ。もしかするとネット時代に儲けているのは、副業に手を出すサラリーマンをカモにする側なのかもしれない。