都内の会社に勤めている男性(39)は、妻と子ども1人の3人家族。子どもはもうすぐ高校生になる。一番お金がかかる時期に差し掛かったが、最近何事にも「やる気」が出なくなってしまった。なんとか会社には行っているが、気分は落ち込む一方だという。
「数年前から調子が出ないとは感じていたんですが、週末にいくら寝ても疲れが取れないようになってしまって…。少し休養が必要なのかもしれません」
原因は男性ホルモンの分泌量低下。怠け者に見えることも
厚生労働省の「患者調査」によると、精神疾患の患者数は2005年から300万人を超えている。なかでも一番多いのが「うつ病」だ。最近では「新型うつ」など、20代、30代にも患者が増えているのだろう。
メンズヘルス外来を開設している城西クリニック(東京都新宿区)が2013年3月に行った調査では、42.3%の男性サラリーマンが「新年度に仕事で挑戦したいことがない」と回答。仕事で抱える悩みは「年収が低い」(54.8%)に次いで、「精神的につらい」(36.4%)、「仕事のマンネリ化」(36.1%)、「やる気が出ない」(32.9%)といったモチベーション面の答えが上位を占めている。
「頑張らないといけないのに頑張れない。意欲は落ちる一方、という人は『うつ病』を疑ってもいいかもしれません」
こう話すのは、同クリニックの精神科医・小林一広院長だ。ストレスが原因なら、それを取り除く。その方法のひとつに、精神科や心療内科のカウンセリングがある。仕事や家庭など、日常生活に支障があるなら、メンタルの問題に向き合う必要がある。
ただ抗精神薬など、精神科的な治療が奏功しない場合もある。その場合は、男性の更年期障害も疑われる。加齢男性性腺機能低下症候群(late-onset hypogonadism)、別名「LOH症候群」とも呼ばれ、男性ホルモンであるテストステロンの分泌量の低下が原因だ。
女性と違い、男性には閉経などのきっかけがない。30代前後からテストステロン量が緩やかに減少し、40代になるとその症状が自覚されることが多いという。変調が目に見えにくいため、一見すると怠け者に思えてしまうこともあるようだ