「大人のルール」は誰がどう教えるか
場の空気を読まないマナー違反の言動に、周囲は呆れ返ってしまいました。ただ、よく考えてみれば間違った発言ではありません。ゲストの講演は、著作と寸分も違わない内容。聞いていて面白いものではなかったかもしれません。
事前に著作を読んで理解したことも立派ですし、そのうえで新しい話が聞けると期待するのも当然の話です。それでも、感想を聞かれれば「よかった」とか「勉強になった」というクッションを置くのが「大人のルール」というものです。
臆することなく自分の意見をはっきり伝える若者が登場したのは、誰もルールを教えていないからとも言えます。では、どうしたらいいのか。先輩には何でも気をつかえという時代ではないですが、無闇に他人のプライドを踏みにじる発言はよくない。そんな大人のルールは「周囲の大人=先輩」が教えるしかありません。
「いまの言い方は相手を傷つける」とアドバイスし、できれば「ここは相手を立てて褒めておこう」と対策も教えてあげてもらいたいものです。ただ「なんでそこまで気を遣わないとならないのですか」と質問してくる場合もあります。
そこで切れて「いいから、やれ」と声を荒げたくなる場合もあるかもしれない。しかし、そんなときは落ち着いて「ルールだから」で押し切ることが効果的です。意外にも納得して行動が変わる可能性が高い。決まりごととして、しっかり意識させることが重要です。
とはいえ、ヒエラルキーに過敏になるのも考えものです。気にしているのはミドル層だけ、ということもあります。年配になると懐も広くなって、馴れ馴れしく接しても疎ましく感じなくなるもの。他人にはルールをきちんと教えつつ、自分では寛容でありたいものです。(高城幸司)