「ヒエラルキー」を意識しなくなった若者に「マナー」をどう教えるか

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「大人のルール」は誰がどう教えるか

   場の空気を読まないマナー違反の言動に、周囲は呆れ返ってしまいました。ただ、よく考えてみれば間違った発言ではありません。ゲストの講演は、著作と寸分も違わない内容。聞いていて面白いものではなかったかもしれません。

   事前に著作を読んで理解したことも立派ですし、そのうえで新しい話が聞けると期待するのも当然の話です。それでも、感想を聞かれれば「よかった」とか「勉強になった」というクッションを置くのが「大人のルール」というものです。

   臆することなく自分の意見をはっきり伝える若者が登場したのは、誰もルールを教えていないからとも言えます。では、どうしたらいいのか。先輩には何でも気をつかえという時代ではないですが、無闇に他人のプライドを踏みにじる発言はよくない。そんな大人のルールは「周囲の大人=先輩」が教えるしかありません。

   「いまの言い方は相手を傷つける」とアドバイスし、できれば「ここは相手を立てて褒めておこう」と対策も教えてあげてもらいたいものです。ただ「なんでそこまで気を遣わないとならないのですか」と質問してくる場合もあります。

   そこで切れて「いいから、やれ」と声を荒げたくなる場合もあるかもしれない。しかし、そんなときは落ち着いて「ルールだから」で押し切ることが効果的です。意外にも納得して行動が変わる可能性が高い。決まりごととして、しっかり意識させることが重要です。

   とはいえ、ヒエラルキーに過敏になるのも考えものです。気にしているのはミドル層だけ、ということもあります。年配になると懐も広くなって、馴れ馴れしく接しても疎ましく感じなくなるもの。他人にはルールをきちんと教えつつ、自分では寛容でありたいものです。(高城幸司)

高城幸司(たかぎ・こうじ)
1964年生まれ。リクルートに入社し、通信・ネット関連の営業で6年間トップセールス賞を受賞。その後、日本初の独立起業専門誌「アントレ」を創刊、編集長を務める。2005年に「マネジメント強化を支援する企業」セレブレインの代表取締役社長に就任。近著に『ダメ部下を再生させる上司の技術』(マガジンハウス)、『稼げる人、稼げない人』(PHP新書)。
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