「監査役」が通報対応の全権を握るのが理想だが
昨年末に内閣府が実施した公益通報者保護制度に関する労働者向け調査によれば、労働者が内部通報しない主な理由は以下のとおりとなっている。
・会社から解雇や不利益扱いを受けるのがこわい
・通報しても十分な対応をしてくれないだろう(過去に通報したが対応が不十分だった)
・職場に知れて、いやがらせを受けるのがこわい
通報者の不安を緩和するために、匿名通報を認めたり社外窓口を設けたりするのは、一般的になってきている。しかし匿名通報では、通報者からの継続的な情報収集や調査結果のフィードバックが難しいという問題がある。
たとえ社外窓口を設けても、結局は通報内容が会社に伝えられるのであれば、大和田常務のような経営者が牛耳っているところでは気休めにもならないだろう。
理想的なのは、特に経営者が関与する不正については、「取締役の職務の執行を監査する」役割を担う監査役を通報窓口として、監査役が通報対応および調査の全権を握るようなやり方だろう。
もちろん、そのためには経営者におもねらず、公正な判断と毅然とした対応ができる人材を選ばなければならず、監査役をサポートする有能なスタッフの配置も必要だ。
現実はそう簡単には進まないが、上場企業などでは監査役の半数以上を社外から登用することが義務づけられており、社外取締役も増えてきているため、体制整備はしやすくなっているはずだ。いずれにしても、まずは経営陣の人選を誤らないことに尽きるのだが。(甘粕潔)