ムラ社会の被害者に「早く降伏しろ」と言えないのか
なんていうと「祖国防衛のために散って行った兵士と一緒にするな」と言う人もいるいかもしれない。確かに、士官学校出のエリートには、そういう大義を持っていた人も多いだろう。
でも、召集された末端兵士までそうだったとは筆者には到底思えない。きっとムラ社会のロジックに縛られ、動くに動けなかったのではないか。ムラ社会の被害者という点で、両者には色々と共通点があるように思う。
きっと戦中に赤旗が発行されていれば、彼らは硫黄島の悲惨さを伝えつつ、「玉砕なんて意味がない、意地を張らずに早く降伏しろ」と論説を展開していたはずだ。
一方で、現代の追い出し部屋報道においては「会社が潰れるまでしがみつけ、我々共産党も“リストラ禁止法案”を作って諸君の玉砕を全力サポートするから」的スタンスに見受けられる。
個人の生涯を一企業に面倒見させるシステムの敗北はもはや明らかであり、であれば末端兵士に玉砕を迫るのではなく、別の選択肢を与えられるような議論を進めることこそ、本来の革新派の役割だと思うのは筆者だけだろうか。(城繁幸)