就活の面接で趣味を問われたら、あなたはどう答えるか。読書に映画、音楽あたりは無難に響くだろうが、逆に特色に乏しくライバルと差をつけにくい。
だが、特定のジャンルに詳しければ話は別かもしれない。事実、音楽のなかでも「ヘヴィ・メタル」ファンを対象にインターン採用するという企業が現れた。
「メタル好きは真面目で几帳面で人当たりいい」
「メタル好き限定インターン採用開始」
こんなユニークな求人情報を出したのは、東京都内でオンライン販売事業支援を手掛ける「ネットショップ総研」だ。2013年8月13日付の発表資料を見ると、目的は「EC(オンライン販売)運営における人材確保」だという。
メタルとは「1970年代末期から1980年代後半にかけて流行したロックのスタイルで、ハードロックの延長線上にあるもの」と説明がある。
同社の長山衛社長自身がメタルファンであり、ツイッターにはバンド「オリンポス16闘神」の「8弦ギター・デス声担当」とプロフィルが書かれていた。
インターンの募集要項には、長山社長のメタルへのアツい想いがつづられている。曰く、「メタル好きは真面目で几帳面で人当たりのいい人間が多い」「トレンドに迎合されることなく、自分の『好き』を貫ける主体性があるのもメタル好きの特徴」で、だからこそ「画面を通じた接客販売」であるEC業界には、メタル好きの人材傾向が適材と強調する。
「難聴OK」「タトゥーOK」「かすれ声OK」とも書かれている。インターンとはいえ「仕事はドンドン任せていき」、能力がある人は将来的に事業責任者にもなれるという。「メタル魂」で1年間みっちり取り組めば、どの企業に行っても通用すると断言している。条件はただひとつ、「明るくて自分の意見をもち、好きを貫くゲイン振り切る精神があること」だ。
込められたメッセージには「徹底してやりぬく力」を持つ人材を求めている様子がうかがえる。しかも「来年をめどに、音楽専門学校との提携や、音楽フェス事務局との連携を予定」とあるから、事業内容の面からみてもメタルに精通している人材を求めているようだ。
「ストーンズファン」まくしたてた割につまらない話
「趣味が音楽」という人は多いだろうが、ありきたりでは面接官の目にはとまらない。逆に、例えば「徹底してメタル好き」と突きぬけていれば、ネットショップ総研の募集条件に合致するように自分の「武器」になるだろう。
「元人事課長」を名乗る人物はブログで、趣味から読み取れることは「どれだけ没頭しているか」だと指摘している。「大切なのは、心から好きな趣味や特技があり、そのことを相手に丁寧に伝える能力」というわけだ。
当たり前のように聞こえるが、音楽でも特定のジャンルやミュージシャンについては誰よりも詳しいと言えるほどのレベルに達するのは、なかなか難しいかもしれない。
会社ウォッチ編集部には、学生時代に就活で、あるテレビ局の面接を受けた記者がいる。「音楽好き」をアピールすると面接官から好きなミュージシャンを問われて、「これ幸い」とばかりに自分がいかにローリングストーンズのファンかをドヤ顔でまくしたてたという。
面接官の反応は悪くなかった気がしたが、次回面接の電話がかかってくることはなかったと記者はうなだれた。要するに、本人が思っていたほど話の内容に面白みがなく、薄っぺらだったのだろう。
何事も徹底していれば強みになるが、生半可な知識ではかえって痛い目にあう、という好例ではないだろうか。